操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体の「前屈」では、踵に体重はかけない。

操体の基本運動のことを「般若身経」と言います。これは、「からだの使い方、動かし方」の法則を、短いお経「般若心経」になぞらえたものです。

 

なお、関西地方では、般若身経と般若心経を混同してトラブルが起こったので「般若身経」とは言わず「基本動作」などと言っているところもあるようですが、我々(操体法東京研究会)では「般若身経」と言っています。

 

これもクラシックバージョンとか、半歩前足バージョンとか、第五分析バージョンとかありますが、共通しているのは、

 

踵(かかと)には、体重がかからない、ということです。

 

私も今まで、何度か「前屈時に踵に体重をかける」という場面を見たことがあります。

また、私自身、勘違いをしていたことがありまして、そう思っていたこともありますが、実際にやっていくと「かかとに体重がかかる」ということは、ない、ということがわかりました。

 

誰にもわかる操体法の医学 (健康双書ワイド版)

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(中心集約運動が紹介されています↑)

 

さて、何故私が「前屈時に踵に体重がかかる」と勘違いしていたかという理由をお話します。

 

橋本先生が、書籍で出しているものには「足底のどこで立つ」ということは明確にされていません。「万病を治せる妙療法」などには「足心」(いわゆる湧泉)と書いてあるものもありますが、湧泉は足のやや前よりの真ん中です。

 

般若身経がまだ「中心集約運動」という名前だった頃のデータがあります。

三浦先生が橋本敬三先生から頂いたというわら半紙です。

それをみると、自然対立位のところに「足底を平均シテ踏ム」「土フマズの前端二心ヺアツメル」と、書いてあります。

 

自然体立位の際は、足の前の方に体重が乗ります。

 

そして不思議なのですが、橋本先生の本には、後屈時には、足のつま先に体重が乗る、と書いてあるのですが、前屈時にはどうなるのか、書いたものがないのです。

 

前屈時に「かかとに体重がかかる」という間違い(操体的、般若身経的な間違い)をしているのは、「後屈時につま先にかかるんだから、前屈時はかかとにかかるのだろう」という憶測から来ていると思われます(私もそう思っていたから)。

 

「般若身経においては、自然体立位も、前屈も後屈も、母趾球」です。これ、おぼえておいてください。般若身経クラシックから最新版までこれは変わりません。

 

試すとわかりますが、踵に体重をかけたまま前屈すると、膝の裏筋が伸びることになります。
自然体立位では後期に「膝のちからをホットゆるめる」(からだの設計にミスはない、より)となっています。

 

膝のちからをゆるめると、踵では立てないのです(やってみてください。かなり妙なことになります)。

 

膝のちからをホッと緩めたまま、母趾球(あるいは土踏まずの前方)に心を集めて(意識しながら)前屈するのです。

 

なお、前屈時にカカトに体重をかけるという指導者を何人かみましたが、結構共通していたのは、指導しているのが、エアロビクスのインストラクターであったり、ヨガやダンスの指導者が多かった(つまり、操体の専門家ではなかった)ということです。

某有名な全国展開しているフィットネスクラブでも見かけましたし、「全国操体バランス運動研究会」でも見かけました。

 

前屈時に、かかとに体重を乗せて(爪先が浮くこともある)、膝の裏をのばしたまま、前屈します。彼彼女達は、柔軟なので、膝の裏を伸ばしたまま前屈ができます。そして、手がゆかについたら、膝を「曲げる」のです(ゆるめるんじゃなくて)。

 

 

私は以前、エアロビクスのインストラクターや、ダンサーにリサーチしたことがありますし、ヨガのインストラクターにも聞いた事がありますが、彼らに共通しているのは「膝の裏筋は伸ばす」というクセがある、伸展系の動きが得意である、ということです。

 

確かに、エアロビクスやダンス、ヨガの指導者であれば、カカトに体重を乗せて、膝の裏を伸ばすということは、十分考えられるのです(エアロビクスやダンスやヨガでは、カカトに乗るのもアリです)。

 

また、上肢を内旋させる場合、テニスをやっている人は、肘を後ろに引くクセがあるようです。テニスをやっている人は、動きにクセがあるのでよくわかります。

 

私達は、操体を学ぶ時(操体の指導者を目指す場合)、からだの使い方、動かし方を一度リセットします。そこから、それぞれのスポーツなり何なりの、からだの使い方動かし方を再構築します。

 

しかし、特定のスポーツにのみ特化しているインストラクターが、操体的なからだの使い方、動かし方を体得せずに、単なる体操として習得し、指導する場合に「前屈時にカカトに体重がかかり、膝の裏が伸びる」(曲げきったあとで、わざとらしく膝を曲げる)ということが起こります。

 

先日も、ある方から「操体の派遣指導をしているというサイトを見たら、めちゃくちゃなことが書いてあってびっくりした」という報告がありました。

 

立位でカカトに体重がかかるとか、前屈時にカカトに体重がかかるとか、どうなってるの?

 

エアロビクスやダンサーのセオリーならばこうなるのかもしれませんが「操体の般若身経」とはベツモノです。

 

こういうことが、平気でまかり通っていても「いろんな先生がいて、いろんなやり方があるからいい」と放置しておいたので、妙なものが出てきたというのが、今の操体界の現状です。

 

 

このような情報過多の中、私のブログを読んで下さっている方には、お礼を申し上げるとともに「あなた、ラッキー」ともお伝えしたい。

 

ちなみに、操体の情報サイトを立ち上げました。

 

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まんまですが、○○操体とか、○○操体法ではない、操体のサイトです。