操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体 講習日記

そういえば土曜の講習はAさんと私が参加していた(いつもより人数が少ない)。

彼女はある学校の先生をしている。来週はその国家試験があり、追い込みで大変らしい。そのせいで頭脳労働ばかりしていて疲れているという。

『頸を診てみろ』と、先生が言う。頭方にまわって彼女の鼻中線をみると、明らかに左側に変位があるだろう、ということが推測される。また、右側の(株下部頸椎にも何かありそうだ。このみかたは師匠に習ったものだが、鼻中線をみると、頸椎のどのあたりに圧痛、硬結があるか推測できる。この間ざっと2秒。指先で頸椎の左側に触れると、ゴロリとした大きな固まりに触れる。

『痛いでしょう』

『ああ、痛いです』

『右のこっちは?』

『そっちも痛いです』

次に後頭骨の下縁に触れると、やはり痛いという。



『ひかがみ(膝窩)診てみろ』



私は足下にまわって、ベッドに乗って正座し、彼女の膝の裏を触診する。左。逃避反応あり。右、同じく逃避反応あり。右のほうが痛い。

『右のひかがみに触れてろ』



先生が頭のほうにまわり、彼女の頸を再度触診する。

『ここ?』

と、先生が言うと同時に彼女の身体が小さく逃避反応を示す。



頸部を先生、ひかがみ(膝窩)を私が触れる。

(これを『渦状波』という。操体のアプローチ法の一つ。中には『気功ですか?』という方もいるがそうではない)



『感覚と、無意識の動きをよくききわけて』



暫くすると、彼女の右手首が動き出した。リズミカルにぱたぱた動いている。

『先生・・手が動いてきました・・・。何だか可笑しいんですど・・・笑っちゃヘンですか?』

『ヘンなことないよ』



これは私にも経験があるのでわかる。身体が勝手に動いてくると、可笑しくなってくるのだ。



暫くすると、今度は腰が左に捻転してきて、伸ばしていた膝が曲がってきて、今度は左手が動いてきた。



『何かを祓ってるみたいだな』と、先生は冗談なのか(冗談に聞こえないところが何とも言えないのだが)言い、

私に向かって膝窩を診るよう合図を送ってくる。膝窩は柔らかくなっており、強めに触診しても痛みはない。しかし、膝窩にはそのまま触れていることにした。先生は今度彼女の頬を触診(正確には擦診)する。左の頬の皮膚が過敏になっているようだ。そこに指を触れる。

暫くするとまた彼女の身体に動きがついてきた。



『どんな気分?』

『とても気持ちいいです・・・・』

先生は次に彼女のお腹の横に座り、腹部の触診をはじめた。彼女は『何でお腹なんですか?』と聞いているが、先生は

『後でわかるよ』という。



私は多分、疲れと緊張で鳩尾(みぞおち)から腹部に緊張があるのではないか、と、頬のあたりに緊張があるということは多分 鳩尾と腹部に緊張があるのだろう、と思った(あくまで推測)。

私はまだ膝窩に触れていた。そのまま暫くして彼女は何度か『意識飛び』の現象に入った。渦状波を与えている時、たまに意識がぱっと 飛ぶことがある(なので、そのまんま意識飛び、というのだが)。これは体験した人はわかると思うが、ほんの一瞬深い眠りに入った時のように 気持ちいい。動きの操法で味わう気持ちよさが10ならば、これは100くらい気持ちいい。加えていうならば、やっている本人もきもちいいのである。



落ち着いてから

『頸、もう一度診てみろ』

頸に触れてみると、板のように張っていた頸椎左側も、丸い硬結があった右側も柔らかくなっていた。



その後私もモデルになったが、ついつい寝てしまったのだった。