操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

多発性硬化症と操体

 操体には「症状疾患」という概念はない。しかし、普通は病名あっての病気?だし、私でさえ何か病名がつけられれば、それにとらわれてしまうところがある。病名にとらわれず、如何なる症状疾患にも存在するボディの歪みを正すことによって(間接的に、やさしく、自己治癒力を増進)、結果的に症状疾患を解消するのが操体である。
「息食動想」という最小限必須責任生活のバランスが崩れると、ボディに歪みが生じ、それが不定愁訴、機能異常、器質破壊と進み、一般的には器質破壊までいってから、初めて病名がつけられる。
操体は、西洋医学とは、病気になる順の考え方が逆なのである。

かといって、操体を受けたいと思う方々がやはり知りたいだろうと、ホームページには自分の経験を載せている。

丁度先程、ご家族が多発性硬化症で入院しておられるという方から問い合わせがあった。多発性硬化症特定疾患に認定されている指定難病である。ご家族の心配もよくわかる。

どの治療もそうだが、やってみないと分からないのは事実である。しかし操体には「禁忌」というものはない(念のため付け加えておくが、禁忌がないのは第2分析、第3分析以上とする)。
楽な方に動かして瞬間急速脱力に導く第1分析では、動けない(多発性硬化症だったら尚更)方には動診を通すことが難しい場合もある。

橋本敬三先生の本には、リウマチの女性が激変した話(しかし結局は生活が元に戻って、服薬生活にもどったらしい)や、筋ジストロフィーの少年のからだが変わったという話が書かれている。実際、橋本先生は「ここ(温古堂診療所)は、病気の墓場だ」と言われていたそうで、とにかく色々な患者が日本中から集まって来たらしい。

何年か前、多発性硬化症の女性が来ていた。残念なのは、途中であきらめてしまうことだ。たった一度や二度であきらめないで欲しいのだ。世の中には即効的な治療法もあるが、即効ということは、逆に戻るのも早いということを忘れないで欲しい。
これは私だけでなく、多くの先生方が感じていることだと思う。操体は遅効性であり、漢方薬のようにじわじわと効いてくる。劇的な変化と劇薬を求められても応じようがないのである。

かといって「道理にかなったこと」だと、驚くような効果が得られることもある。これは本当にからだの不思議を感じずにはいられない。