操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

講習についての思い出

操体の講習を初めて8年程経つが、途中で講習のやり方を転換した。



当初は、一番最初に操体を習ったK先生に習って「基礎」と「応用」に

分けて、8回の講習としていた。



当時はオリジナルのテキストを用いていた。



その当時の受講生で、今現在全く音信不通で、操体臨床家向けの講習をやっていて、その回数が8回という方がいる。その方の講習用テキストは多分その当時のテキストの焼き直しであろうと思われる。

なお、講習料は当方より高い(しつこい?)。



現在はテキストは用意していない。何故なら操体は進化し続けているし、こちらもコンスタントに勉強を続けている。

8年前と同じ事をやっているのでは、進歩がないではないか。

講習の時には、随時最新の資料を作ってお渡ししている。



それはさておき、



何故このテキストを使うのをやめたかと言うと、痛みや部分の硬結をとるにはとにかく即効性があったのだが、どうにかすると、単なる局所の痛み取りに終始してしまっていた。また、「快方向に」と言いながらも、実は楽なほう、辛くない方に動かして脱力を指示していたものだった。



これが、快適感覚をききわけさせるものなのか、



そういう中、脱力の方法も、操法の回数も、きもちのよさに委ねるという方法を、真剣に学びたいと思ったが、当時のパートナーに『既に自分たちのスタイルを確立しているんだから、今更他の講習を受けるなんてもっての他だ』と反対された。



しかし、私はスタイルを変える事にした。

今までのやり方は、単に痛みや硬結を取る「技法」を伝授しているだけではないか?

痛みが取れたからといって、治ったのではないのだ。



それは、今までやってきた操体を一度壊して、構築するという経験だった。

『楽な動きか辛い動きか』という二者択一の問いかけから

『この動きに快適感覚があるのか、ないのか』という問いかけに一気にチェンジする事にし、三浦先生に相談した。



元々私は先生の『操体法治療室』を読んで操体を志したので、やはり一度はきちんと師事すべきだとも思っていた。なので、私にとってはしごく当然の事だった。



古くからの受講生は『院長(注:私の事)はやり方が変わった』とか

『三浦先生にかぶれた』などと、パートナー(当時の副院長)に告げ口(笑)する人もいた。



結局、オリジナルの操体流派をやっていきたいパートナーとは別々にやることにした。



この決断は正しかったと思っている。



そして、私は晴れて(?)正式に先生の門下に入ったのだった。



それまでの経験で、人様に指導をしていたし、基盤はある程度できているものの、今までについていた癖を一度クリアにして最初から組み立てるのは大変だったが、面白くもあった。



今までの経験は、決して役にたたないわけではなかったし、習得のスピード化を助けたと思う。

また、操体に関する基礎学習と、所有データ量は当初から非常に多かったので、それも役に立っていたと思う。



一年間で100講習に参加し、最新の操体臨床を学ぶと共に、自分が操体を教授するための勉強をしたという記録がある。

単純に計算すると480時間になるし、助手としても修行を積ませていただいた。

その時は10年分位の勉強をしたのではないか。

何というか、高速インプット繰り返し学習、のようなものだったような気がする。



この時の勉強の工夫は多分参考になると思うので、記録しておく。



基本の基本

身体運動の法則(からだの使い方、動かし方)をしっかりマスターすること

(これを最初にきちんと体現できるようにしないと、動診操法に入れない)





1.頭をまっさらにして臨むこと。『自分は以前このように習いまし た』とか『本にはこう書いてありました』ということにこだわらず素直に習うこと。とにかく素直になること

2.書くだけではなく、イメージトレーニングすること

3.言葉の誘導などは、最初は「完コピ」をすること

4.同じ話がでてきても、有効な復習になるので、再度メモをとり、確認すること

5.疑問点があったら、隣の人(その人も曖昧かもしれない)に聞かず、先生に聞くこと

6.まだ習っていないことを質問しないこと、その時を待つこと

 (教える側にとっては、教え時を読んでいるのだから)





1。本もいつ書かれたものなのか。自分も最初の著作にはあやふやな点、間違いがあるのでそれはサイト上で正している。橋本敬三先生の本についても、ご本人が「間違いがある」と、後におっしゃった箇所もある



2。イメージと言えば、練習する時、からだの様子を絵にかけるとよい、と教わった。絵に描けるということはイメージできるということだ。また、イメージできないことは、実行できないことでもある。また、美しいフォームを繰り返し脳裏に焼き付けるという練習は有効な方法だと思う。



3。言葉の誘導は、最初は先生の完全コピーをすること。言葉の意味を考え、何故その言葉を用いるのか、よく考えること。言葉はコトハ、コトダマにも通じ、動診、操法の最中、被験者は指導者の言葉の影響を大きく受けるということを意識すべきだ。



4。反復練習はとても大切。繰り返していくと、ある時一気に質が向上する。

以前ブログにも書いたが、「Fコードの法則」あるいは「ある日突然できるの法則」という。また、やっていないと「ある日突然できなくなるの法則」が発動(?)する



5。新しい事を勉強したい、はやく実技をやりたい、身につけたいという気持ちはよくわかる。

しかし、基本の型を知らずにいきなりフリースタイルの打撃練習をしたがるようなもので、「急がば回れ」。

また、教える方も手に負えるような人数であれば、人それぞれの進捗をみるであろうし、個人レッスンなら尚更進捗に合わせるだろう。

ある方は、実技に入る以前に「すぐ現場で使いたいから何か一つ教えて欲しい」と言われた。

気持ちは分かるが、基礎の形を全くやっていないのに「技」だけ知りたいというのは早急ではないか。

また、そのような付け焼き刃的なものはすぐボロが出るということもわかって欲しい。



逆に、きちんと操体の「作法」が身についていれば、私の経験から言っても、早いスピードで学習することができる。操体理論と「作法」を正しく学び、取得することが操体を学ぶ上での王道ではないか。

また、この「作法」はいかなる療法にも応用可能なので、これを身につけないのはもったいないと思う。



「作法」は文章で読むと「簡単じゃないか」と思う場合が多いらしい。

(実際、読むといかにも簡単に見えるのだ!これが)

中には「本で読んだから知っています」という受講生もいた。

しかし、実際体現するとなると、正確に体現できる場合は極めて少ない。



作法、というのは「身体運動の法則」の事である。