「猫背です」という方の殆どは、実は猫背ではない。猫背というよりも、肩が前方に巻き込まれているのが目立つ、というのが実際のところだと思う。
「何で猫背になったんだと思う?」と聞くと
「姿勢が悪いから」
「じゃあ、なんで姿勢が悪くなったの?」
「う〜ん、背が高いからかな」「カバンをいつも同じ側にかけるから?」
何故姿勢が悪くなるのだろう。姿勢が悪くなっているということは、ボディが歪んでいるということだ。
皆、ボディが歪むということが良くないという事は知っているのだが、「何故?」と聞かれるとなかなかわからないものだ。
操体では、『息食動想』という、人間が生きて行くための最小限必須責任生活(要は他の人に変わってもらえない営み)のアンバランスによってボディが歪むと考える。
呼吸、飲食、身体運動、精神活動の4つのレベルが60%までだったらどうにか及第だが、どれか1つが60%を切って下がると、他の3つも「相補連動」して悪くなる。
猫背(姿勢が悪い、ボディの歪みのはじまり)位だったら、この4つの営みのルールを守ることによって、健康の度合いの悪化を防ぐことができる。
この辺だったら専門家の指導を受ければ自分でもケアできるだろう。
さて、私が最近思うのは、猫背や姿勢が悪い、というのは「からだは左右対称で、姿勢良くしゃきっとしていなければならない」とか、親御さんが「あんたは姿勢が悪い」と叱るからかもしれない。
姿勢や歩き方についてだが、親御さんが本人を目の前にして、「うちの子は姿勢が悪くて」とか「歩き方がヘンで」と、私に言われることがある。
その口調を聞いていると、多分私に言うまでもなく、本人、あるいは周囲の人々にも同じ事をもっともっと言っているのでは、と心配になることがある。
親御さんが「うちの子は姿勢が悪くて」と言っているのを本人が聞きつづけていると、本当に姿勢が悪くなってしまうことがある。
お母さんの言葉は暗示のように子供の心の奥に入り込み、自分は姿勢が悪いんだ、という強力な暗示にかかってしまうのだ。
この呪いを解くカギは、「きもちよさ」である。それも「伸びてきもちいい」とか「ちょっときもちいい」という
ものではなく、質の高い、とろけるようなきもちよさである。
それを提供できるのが、操体の第2分析以降だ。
きもちよさを味わうこと、そのものが治癒となる。
きもちのよさは、ボディの歪みを正すのである