操体法大辞典

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操体的に考える。自分はきもちよく動けるというのは本当か?

 世の中には身体能力が高い人がいて、きもちよく動けてしまう人がいる、と思っていた。勿論いないわけではないと思う。平直行氏とか、少なからず数人は知っている。

それを師匠に言ったところ「それはきもちよく動いてるんじゃなくて、楽に動いてるだけじゃないか」と言われた。

なるほど。

更に考えてみると「きもちよさを探して」と言っているご一派は、私が知っている限り、武術とかそっち系に関わっている。「きもちよさを探して」ご一行様は、「きもちよく動けるのが前提」な方々が多いらしい。

もっと考えると、彼らは、実は「楽に動いているんだけど、きもちよく動ける」と言っているのではないか。

「オレは身体能力が高いからきもちよく動けちゃうんだよ」と偽っているんではないか。

そうすると、舞踏を思い出した。以前、師匠と一緒に、松岡正剛氏と舞踏家のT氏の対談に参加した時の話である。

映像が上映されたが、裸の上にレインコート一枚を着たT氏が、雨の中で地べたでからだをくねらせている。

師匠曰く、この手のパフォーマンスは、メンタル系に問題がある人などが見ると、癒しになるらしいが、そうでない人間が見ると、不快に感じるのだそうだ。
それはそれで、こういうのが必要な人もいるのだ。

なるほど。

私も昔、大野一雄さんをパーティでお見かけしたことがある。車椅子に乗って来られていた。大勢の人に囲まれており、大野さんが突然両手を上にさしのべると、感動して泣き出す女性もいた。

私には、枯木のようなおじいちゃんが両手をあげてぶるぶる震えているようにしか見えなかった(すんません)。

まあ、大野さんがどれだけ偉大な人かもっと良く知っていれば、私の印象も違っていたのかもしれない(汗)。

なるほど

先の対談の最後、質疑応答のコーナーがあった。師匠は思い切り元気に挙手し、「私は快適感覚、すなわちきもちよさに関する研究と仕事をしているのですが、先程の映像は非常に不快でした。何故、きもちわるいことをわざわざやるんですか」

という質問をした。びっくりした(汗)

T氏はちょっとむっとしていたようだが、松岡さんも焦っただろうが「みのもんたもみんなきもちわるいよね」とか何とか言ってその場をおさめた。

その後、会場を出る時、前に並んでいた大学生らしい二人組が
「オレもさ、ホントはきもちわるいとおもってたんだよ」と言っていた。「はっきり言えないよな」

多分、あの場にいた人達の殆どは、T氏は有名な舞踏家で、彼のパフォーマンスをきもちわるいということは、自分の芸術のセンスを疑われることを恐れて「すばらしいパフォーマンスです」と言っていたか、あのパフォーマンスがからだに馴染む、あるいは受け入れやすいような精神状態にあったかのどちらかだと思う。

さておき、「オレってさ、身体能力が高いから、きもちよく動けちゃうんだよね」と言う人も存在するが、これも多分「きもちよく動けるってことは、オレの身体能力が高いからだ」という偽善ではないかと思うに至った。