「典座(てんぞ)」とは
炊事係は一般に「飯炊き」「権助」などと呼ばれ、新米の役回りとされたり、低く見られがちな職務である。しかし調理や食事も重要な修行とする禅宗では重要な役職とされ、日本曹洞宗の開祖道元は著作「典座教訓」の冒頭で、典座には古来より修行経験が深く信任のある僧が任命されてきたことを述べている。日本の現在の禅宗寺院においても、道元が典座教訓で記述した、求法のため宋で修行した際に二人の老典座との出会いから禅修行の本質に覚醒した故事に鑑み、重要視される職務である。
典座、というのは修行道場での炊事係です。
道元禅師の「典座教訓」を読むと、「米(よね)と言わず、およね(おこめ)と言いなさい」とか「といだお米はフタをしてネズミに食われないようにしなさい」とか「喋って料理にツバを飛ばさないように」(以上畠山の意訳)のように、
「正法眼蔵」みたいな本をお書きになるのに、小うるさいおばちゃんみたいな事言う??(笑)という感じです。
いえ。小うるさいおばちゃんではなく、修行なのです。
こちらの映画は、映像製作集団空族(くぞく)と、曹洞宗青年会の皆さんによる映画です。主演のお坊さんのひとり、河口智賢(ちけん)さんと、空族の富田監督が従兄弟同士なのだそうです。
子どもが重い食物アレルギーの智賢さん、福島で、震災と津波によって全てを失った「隆行(りゅうぎょう)さん役の倉島隆行さん。
★智賢さんは実際にお子さんが食物アレルギーだそうですが、隆行さん、実は関西のお寺の住職さんです。福島では本当に津波で全て流されて、命を絶った方もいらっしゃるそうで、その辺りはフィクションだそうですが、実話に限りなく近いのでは。
浜辺で棒を持って地面に突き刺しながら、ご遺体を探すシーンや、震災直後、ご遺体をトラックに積んで走るシーン、仮設住宅(私の親戚も宮城で仮設に住んでました)に住んでいる檀家のお婆ちゃんを訪ねるシーンなどはつまされるものがありました。
そして、この映画ですが、見どころと言えば、青山俊董(あおやましゅんどう)老師が出演なさっているところです。
簡単に言いますと、曹洞宗の尼僧の中では最高位の先生です。
撮影に参加したラッパーのお兄ちゃんも「老師すげー」「老師かっこいー」みたいな感じだったそうですが、
「老師、かっこいい!!」
でした。なお、智賢さんとの問答は2時間に及んだそうですが、是非全編をきいてみたいものです。。。
お寺で精進料理の教室をやって、若い人が喜んでくれた、という智賢さんの話に、
「モンゴルでは冬の間は年を取ったのとか、乳が出なくなった家畜を大事に頂いて、春から半年は、乳製品を食べて暮らす」という話をされます。
つまり、モンゴルでは「肉を食べるな」と言ってもダメなわけです。この場合「無用な殺生はしない」「ありがたく命を頂く」という話が続いたり、お寺に生まれて、最初は坊さんになるのがイヤで反発したという智賢さんに「反発結構!」と返したり。
フィクションとノンフィクションが入り交じり、時間が飛んだり、智賢さんが天童寺(道元禅師が中国で修行したお寺)に行って、裸足で地面を踏みしめてみたり。
途中、曹洞宗の青年会のお坊さんたちが持ち回りでやっている「いのちの電話」相談が出てきたり。
なお「致知」という月刊誌がありますが、最新号(2019年11月号)に、私のお師僧様、中野東禅先生が、映画「おくりびと」のモデルとなった青木新門さん(作家)と対談しています。