操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

職場の人間関係の悩み。

「職場で、上司に辛く当たられている」というお悩みを結構受けます。

ある男性は「上司と上手く行かなくて転職したけれど、新しい上司とも上手く行かずに、また転職する羽目になった」と言っていました。

ある女性も、いわゆる「お局様」の覚えが悪く、風当たりが強くて辛い」と言っていました。前職でも同じような目にあったと言っていました。
あまりに同じ事が起こるので、何か超常的なものに取り憑かれていたらどうしよう、とも言っていました。

 

先の男性とは、電話で少し話をすると

「あ、この人は、思ったことがストレートに口に出ちゃうので、上司に目をつけられちゃうんだな」と判りました。

というのは、話していた私自身が「え?この人失礼なことを下手(したで)に言うじゃん!」と思ったからです。本人は腰が低いのですが、すごく失礼なことを平気で言うのです。多分、これが上司を怒らせているのです。

もう一人の女性は、人が自分のことをどう思っているか気になって仕方ないと言っていました。また、自分の事を卑下するような言い方をするし「すみません」というのが常套句になっていました。

「すみません」を連発することについては、昔から「すみませんな人になっちゃうから」だと思っていました。それは間違いありません。

★「すみません」という言葉自体に問題があるのではなく、これがクセになっていることに、問題があるのです。

例えば、電車で席を譲って貰ったら「すみません」ではなく「ありがとうございます」と言えばいいのに、すみません、と言う。

操体を受ける方の中にも「お入り下さい」「すみません」「仰向けにおやすみ下さい」「はい、すみません」と、返事の代わりに「すみません」という方がいますが、治りが遅いのは事実です。

 

この辺りは本当に不思議に思っていました。
確かに「すみません」をクセにしていると「すみませんと言わざるを得ない状況にいつも陥る」ことになるのです。

 

そこで、思い出したのが、大嶋信頼さんのこの本です。

ちなみに、上記のような方は、結構頑固なところがあるのだと思いますが、私が「これを読むといいですよ」と勧めても、なんやかんやと理由をつけて読まなかったり、「いつか読みます」ということが多いです。

 

悩んでいるのに、自分は変わりたくないのかもしれません。

 

いちいち悩まなくなる口ぐせリセット

いちいち悩まなくなる口ぐせリセット

 

 これはご本人(大嶋さん)の体験だそうですが、子供の頃の、謙虚でなくちゃ」という思いが、いつの間にか「自分はダメだ!」という卑屈に変わってきたという話です。
(大嶋さんのご両親は敬虔なキリスト教徒で「思い上がったら、ダメで最低な人間になる」と教えられて育ったんだそうです)

そして、これが重要なのですが、一方で「自分はダメだ」といういつも言葉にして言うことで、「今はダメだけど、いつかすごい才能を発揮できるのかも!」と、心のどこかで期待が持ててくる。

「自分はダメだ」と、しょっちゅう唱えることで、「努力すれば、いつか普通以上の人になれる」と信じます。

これが「ダメだけど、いつかよくなる自分」というイメージが消えて「何をやってもダメな自分」というイメージにすり替わります。

年月が流れ、大嶋さんはアメリカの大学に留学するのですが、そこで転機が訪れます。

そんな卑屈めいた私に、ある転機が訪れました。
大学生になったあるとき、先輩と話をしていたら、何かの拍子に「僕はダメなんですよ」といつもの口ぐせがつい出たことがあります。

それを聞いた先輩からは「お前のそういうところが嫌いだ」と言われてしまいました。

私は内心、「また怒られた・・・・・・」と感じました。自分がダメだから、すぐに怒られて嫌われる」と。

でも、やさしい先輩は丁寧にその理由を話してくれました。冷静に聞いてみると、先輩の怒っているポイントは全く違い、「実は自信家のくせに、卑屈ぶってごまかしているところが鼻につく」ということでした。

さらにこじれて「自分はダメだ」と思いながら、心のどこかで「ダメなんかじゃない」本当はすごいんだ!」と、無意識のうちに周囲を見下すような態度を取っていたのです。そして、口ぐせのせいで隠れてしまった「才能を開花させた自分になりたい」という気持ちにようやく気づけたのです。このときから「自分はダメだ」と言いそうなタイミングで、「結構できるかも!という口ぐせに変えてみました。

 「結構できるかも!」とボソッと言うだけで、大きな変化が訪れたそうです。

 

さて、話は元に戻りますが、先に出て来た「職場での上司との人間関係が上手く行かない」というケースですが、大抵は腰の低い、人のことをよく考えている(そして、人が自分のことをどう思っているか気になる)人が多いようです(私の実感です)。

 

こう言う場合、大抵は裏に「怒り」が隠れているか、

「自分はダメだ」と思いながら、心のどこかで「ダメなんかじゃない」本当はすごいんだ!」と、無意識のうちに周囲を見下すような態度を取っていた、ということがあり、上司やお局様に「なにこいつ!」みたいな感じで捉えられていたのかもしれません。

 

もう一度言いますが、人間関係で悩んでいる方で、相談にいらっしゃる方に、アドバイスをしても「私はそうじゃないから」「いつか読みます」というように、アドバイスを求めていながら、こちらのアドバイスを無視することがあります。

「自分を変えようと努力しているんですが」と言うのですが、肝心なところを変えないのです。

というか、悩んでも人間関係に困っても、変えたくないように見えます。

 

しかし、たまに「目からウロコです!」という嬉しい連絡を頂くこともあります。

操体の臨床もそうですが、カウンセリングや占いも同じで、
「水場に馬を連れて行っても、水を飲むのは馬次第」
「取る取らないはテメエの勝手(by 橋本敬三)」という言葉があります。

結局、最後に決断して、やるかやらないかは(変わるか変わらないか)は、本人の自由なのです。