操体法大辞典

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般若身経(2)型か。養生法か

東京操体フォーラム実行委員ブログより

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私が「般若身経」に正面から取り組んだのは、三浦寛先生のビデオを撮った時だった。
あの時は、三浦先生と頭を捻った。
「般若身経、楽勝」だと思っていたら、ものすごくディープだったのである。
 
また、自分の講習会やフォーラムで「般若身経できる人」という人にやってもらっても、殆ど出来ていないことが分かった。
 
「あ、あのラジオ体操みたいなヤツね」と、甘く見られていたのだ。
 
三浦先生の姿勢は「健康体操」や「養生法」ではなく「身体運動の法則」だった。
 
からだの使い方、動かし方の基礎であり、あらゆる動作の基礎となるものだ。
 
なので、東京操体フォーラムでも「健康体操」「養生法」という意味ではなく「からだの使い方、動かし方の基本」と、捉えている。
 
そして私自身は、般若身経を
 
  1. 型(基本、ルール)であり
  2. 診断法であり
  3. 治療法である
 
と、捉えている。
 
1は、例えば左に側屈する場合だが。腰が右に移動し、右の母趾球に体重が乗る。
左の母趾球は支点となり、左の踵は軽く浮く。
これは、左側屈する際の、ベストなからだの動かし方であり、型である。
(ラジオ体操とは違って、重心の移動が行われる)
 
 
2は、診断法であるが、側屈の場合、左右ためしてみて、やりやすい方とやりにくい方の差がある場合がある。
これが「どちらがスムースで、どちらがひっかかるか」という、二者択一の(第一分析)の診断分析法になる。
 
 
第二分析、第三分析、第四分析、第五分析の診断分析法もあるが、ここでは割愛する。
 
3の治療法について。第一分析の場合は、やりやすい方、スムースな方へ、数回側屈を試してみて、その後、改めてやりにくかった方を試してみる。
大抵は先程よりもスムースになっており、左右のバランスがとれている
 
 
「型」と考えるのは、空手など、武術の型に通じるところがある。
道場では、最初からいきなり自由組み手はさせない。
まずは型を習得させる。
 
ここでよく話題にあがるのが、映画「ベスト・キッド」である。
 
オリジナルの映画では、ミヤギ先生がダニエルに車を拭かせる。車を果てしなく拭くという練習はつまらないし疲れるが、それが身についた時、それは技となる。
 
なお、ベスト・キッドの「正式な続編」として「コブラ会」というドラマがあるが、こちらにも初心者の男の子に床を拭かせるシーンがある。
 
そして、ジャッキー・チェンジェイデン・スミスの「ベスト・キッド」では、ジャッキー演ずる「ハンさん」が、少年ドレ(小さいドレ、ということで「シャオドレ」と呼ばれている)に、脱いだ上着を拾わせて、着せて、脱がせて、床に置き、また拾わせて、着せて、脱がせる。
 
というのは、ドレはいつも帰宅すると、上着を脱いでハンガーにかけずに、床に置きっぱなしにして母に注意されていたのだ。
しかし、ハンさんのところで毎日これをやっていたら、家でも自然に上着を脱いだらハンガーにかけるということができるようになっていたのだ。
 
型は、それが意識せずとも自然にできるようになるまで、練習することなのだ。
 
 
ちなみに、操体を勉強する場合にも、いきなり介助補助ではなく、最初は「般若身経(からだの使い方、動かし方)を習得するのがベストである。
 
 
標題の「型か、養生法か」というのは、どちらか一方だと決めつけるよりは、柔軟に使い分けができるほうがよい、と考えて頂ければよいだろう。
 
型が上達すれば、それがすなわち、診断法になり、治療法になるからだ。
 

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