操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

操体臨床実践者が被験者役で練習するのためのヒント(操者の言うことを素直に聞け)

最初に言っておきます。操体臨床では

「きもちよさは(動いて)探しません」(動いても見つかりません)

「きもちのよさは、ききわけるものです」

 

こんにちは。畠山@TEIZANです。

昨日は操体法東京研究会の定例講習がありまして、私もサブ講師として出席しています。

 

そこで改めて、大事なことに気がつきましたので、書いておきます。

 

操体は「快」が大変密接に関係していることは事実ですが「快」を出すべきところと、そうでないところがあります。

 

ここを間違えてヘンなことをやっている人が多いように思えます。

 

最初に、操体をやっている人ならば、絶対知っている(知らない人は、勉強して下さい。これを知らずして操体をやってる、なんて言ったら、バチが当たります

 

「般若経」(からだの使い方、動かし方の法則)です。

 

これ、中には「健康体操」として捉えている人もいるようですが、我々操体法東京研究会では「からだの使い方、動かし方の基本法則」として捉えています。

 

個人的には、「般若身経」は、3つの働きがあると考えています

1.からだの使い方、動かし方の基本法

2. 診断分析法

3.治療

 

基本法則というのは、からだの構造にかなった、無理がなく運動効率の良い「からだの使い方、動かし方のルール」のことです。疲れにくく、所作が美しいのが特徴です。

これに背反すると、例えば「ボディが歪む」とか「腰を痛める」とか「手首を痛める」とか、色々な不都合が起こります。

ぎっくり腰などは、これが一番多い。

 

例えば、側屈する場合は、倒れる方と反対側の母趾球を支えとして、腰は上体が倒れる方と反対側に、軽くスライドします。上体が倒れる方の足は、母趾球を支えにして、踵が軽く浮きます。倒れる方と反対の足に重心がかかります。

 

逆に、腰を固定して、上体のみを倒すと、倒れる方の足に重心がかかり、歪みを作る原因になります。

 

★ラジオ体操などは、あきらかに腰を固定して、上体のみを倒す(それもハズミをつけている)ので、歪みを作る原因になったりします。

これらもストレッチ的や、脇腹を伸ばすという意味でやればいいのですが、「日常、生活の中でからだを使う場合」は、法則に従ったほうがいいのです。

 

つまり、鍛えたりする場合と、日常生活でからだを使う場合は、違うということです。

鍛えたりする場合は、法則に背反することもあるので、気をつけないといけませんし、スポーツ選手に怪我が多いのは、このためです。

 

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話が長くなりましたが、

 

般若身経も、最初は基本を覚えることが大事です。

基本を覚えたら、実際にやってみて(前屈後屈は、からだの構造から言って、前屈のほうがやりやすいに決まっているので、比較しません)、例えば左右捻転の、どちらがスムースであるか、やりやすいか、というのを実際にやってみます。

これが「分析(診断)」です。

そして、例えば右捻転がやりやすかったら、右に2回~3回右捻転をやってみます(やりやすいほうにやる)。終わってから、左右捻転をためしてみると、反対側、左捻転もやりやすくなっている。

これが、「治療」です。

 

操体を指導するには「診断分析」「治療(操法)」の違いを明確に理解していなければなりません(鉄板です)。

 

さてさて、本題です。

 

昨日の講習で、受講生と、実行委員のT本君が組んで実技の練習をしていました。

やっていたのは「型」の勉強です。

いいですか。です。

型です。型です。

しつこく書いてますが「型」、つまり、からだをどう表現するかという型の練習です。

型なんだってば。

 

私は後ろ(被験者役の背中側)から見ていたのですが、T本君が操者役で、受講生Aさんが被験者だった時、受講生Aさんの動きが何だかヘンだと感じました。

 

★私はこの辺りは鋭いのです笑

 

果たしてT本君でも同じような動きが起こるのか、T本君が被験者役の時も、彼の背中を見ていましたが、ヘンな動きは起こりませんでした。

 

再度Aさんが被験者をやりましたが、やはり動きがなにか妙です。

 

私は直感的に「これは『きもちよさ』を探しているんだな」と気づきました。

 

考えてみてください。この時はしつこいですが「型」の練習をしているのです。

型の練習をしているときは、余程どこか痛いとか怪我をしているのではないので、「快」は関係ありません。

 

また、指導者役のT本君は「型の練習」なので「きもちのよさ」なんて、一言も言ってないわけです。

 

Aさんは、なまじっか知識があるので「快適感覚をききわけなくてもいい型の練習」なのに「きもちよさを探してヘンな動きをしていた」のです。

 

★この「ヘンな動き」には、特徴があるので、私は見ればすぐわかります。

 

Aさんは「ハイ、きもちのよさを探していました」と言いましたが、

私は少しめまいがしました。というのは、三浦先生も私もT本君も、「きもちよさを探せ」なんて、今まで一言も言ったことがないからです(汗)。

 

っていうか。きもちよさは動いて探しても見つかりません。

(楽な方とか痛くない方は見つかるかもしれません)

 

三浦先生も「AはT本(操者)の言ってる事を聞いてないな」と言いました。

「T本は『きもちのよさをききわけろ』なんて言ってないぞ」

 

また、介助補助の練習をしている際、受講生に「どうだった?」と私が聞くと

「きもちよかったです」ということがありますが、「操体指導者の練習をしているのだから」この答えはペケです。

 

型の勉強をしているのだから「気持ちよかった」とか言うのは、お門違いなのです。

 

ここんとこ、大事です。それは「患者さんとして受ける時」に言って下さい。

 

患者さんならば勿論いいのですが、練習をしているのだから「力が強かった」とか「タイミングが悪かった」とか「いい介助でした」とか、介助補助に対する評価をしなければいけないのです。

 

このあたりは、操体を受ける方向けの話ではなく、操体指導者になるべく勉強している方向けの話になります。

 

実際の話ですが、普通にいらっしゃるクライアントの方は、素直に操者の話をきいてくれます。

逆にヘタに前知識があったりすると「きもちよさを探す」とか言い出すのです。

 

そして「操体法治療室」の今先生のパートにあった話を思い出します。

 

温古堂に来ていた患者さんが、気を効かせて言われてないことをやったりすると、橋本敬三先生が「人が言ってないことすんな!」「よげいなことすんな!」とオコるシーンです。