操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

スポーツと日常生活は違う。

運動神経が鈍いから操体は出来ないかも?という方がいらっしゃいますが、それは全く関係ありません。

 

どんな方であっても引き出しがあるのが、操体のプロってもんですよ。

 

覚えている面白い?話があります。

20数年前のことですが、ある会合に参加して「ちょっと操体のことを教えて」と言われたので、1番実感しやすい「右手で物を拾う時には、左足を前に出して動作を起こす」(今は、右手で拾っても左で拾っても左足は半歩前に出して拾う、というのが定説になっています)を紹介しました。

 

その時、その場にいた一人の男性が「オレは高校時代野球をやっていた。内野手だったんでボールを拾う時右手を出しながら右足を出して拾っていた」と、怒りだしたのです(多分お酒が入ってたからだと思いますが)。なんでもかなり強い高校にいたとか。

この人にとっては、内野手時代の自分のアクションを否定されたような気がしたのかもしれません。

高校時代野球部にいたことが自慢だったりすると尚更ですよね。

 

しかし、その方に「今、野球はどのくらいの頻度でやっているのか」を聞くと、年に1回か2回というのです。


それならば、日常の動作では、からだの使い方、動かし方に適った使いかたをした方がいいのではと思います。

 

先日、興味があってある身体論の本を読んでみました。

 

身体論と言っても結局はスポーツ理論なんですね。著名なスポーツ選手のからだの使い方を分析しているのです。

 

なかなか興味深いものがありました。人にはからだの元々の使い方のクセがあり、もし、スポーツなどで伸び悩む場合は、指導者を変えるといいという提案です。

 

指導者と生徒が同じからだの使い方をするタイプであれば、上手くいきますが、そうでない場合は、生徒は伸びません。これは確かに言えると思います。

 

 

 

そして、もう一つ考えていただきたいのは、スポーツで通用する身体論が、果たして日常で元気で健康に暮らすための身体論と果たして同じかということです。

 

アメリカで活躍する著名な野球選手が肘を痛めて欠場というのがニュースになりましたが、その方に限らず、スポーツ選手はかなりの割合で怪我に悩みます。

怪我をしないために、トレーニングを積んだりトレーナーを使ったりするわけです。

 

プロのスポーツ選手の「試合や競技で勝つ」ための身体論と、日常を元気で過ごすための身体論は違うのです。

 

先にお話しした元高校野球内野手のオジサンも、今だに週7日野球をやっているのなら、それなりの調整法がありますが、年に一度や二度の試合です。なにも日常生活をそちらに合わせることはないのです。

 

私がなぜこんなことを言うかというと、私自身、運動とスポーツが大嫌いだったからです(笑)。

 

ちなみに私は「公認スポーツプログラマー文科省系管轄)」と「健康運動指導士(厚労省管轄)」を持っていますが、学生時代の友人知人からは「信じられない」と、言われます。まあ、からだを動かすのが嫌いなわけではなく、集団で何かやるとか球技がどうもダメだっただけです。

 

しかしながら、そうであっても操体はできます。

 

逆に、操体における連動の話を理学療法士などにすると、「全身まるごと」ではなく、筋肉を個別に捉えていることがわかります。

 

我々が「右上肢(手首前腕)外旋」と言う場合、右上肢の外旋に従って、遠心性の動きとなり、その動きは「全身形態では、左体側側(ひだりたいそくがわ)が伸び、右側屈」になってきます。

 

これが、末端で表現すると、全身に動きが波及するということです。

 

一方、筋肉をパーツのみで見ていると「右上肢(手首前腕)の外旋」ではなく、右上肢回外(つまり、肘から下のみ動いている)」という言い方をします。右肘から下しか動かさないので、全身形態の連動は起こりません。

 

スポーツ選手などで、フォームが美しい場合は、必ず全身形態がスムースに連動しているはずなのですが、鍛えたりケアしたりする場合は、何故かパーツで見る。このあたりはかなり不思議です。

 

スポーツで使うからだと、日常生活で使うからだはちょっと違いますよ、というお話でした。