操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

2020春季東京操体フォーラムのチラシ完成

今日は、ハロウィンですね。あれは要するに西洋のお盆(死者が帰ってくる。で、人間だとあの世に連れて行かれるので、お化けや魔女の格好をするらしい。超意訳)です。

この辺りは調べると面白いですが、決してコスプレして騒ぐ日ではないということですね。

 

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さて、2020年秋季東京操体フォーラム が11月23日に、オンライン開催されます。

zoomでの開催です。接続が心配な場合、接続テストもやりますので、参加申込み時にお知らせ下さい。

なお、zoomで参加出来る環境ですが、
ネットに繋がっているパソコン
Wi-Fiで繋がっているタブレットスマートフォンでしたら大丈夫です。タブレットスマホの場合、Wi-Fiでないと、パケット代を食うことがありますので。

 

お薦めは、午後のプログラムです(午後のみの参加費用は3000円です)。午前午後参加の場合は5000円になります。詳細はサイトをご覧下さい。

 

三浦寛先生による、第五分析の公開と、フォーラムに向けて、実技動画をバンバン撮っていますので、そちらも公開予定です。

 

第五分析というのは、操体実践者からしてみると、楽が快に変わった時以来、いや、それ以上の大変革です。そして「快」の意味が一層深く問われることになります。

そして、何よりもお伝えしたいのは、結果が出るということです。そしてこれは「快」の取扱いに悩んでいた(患者さんがきもちのよさを認識してくれないとか)操体実践者にとっては「快を強要しなくてもよい」と言う点では、福音になるでしょう。

 

私自身も、臨床やセルフケアに「第五分析」を導入し、確かな手応えを感じている一人です。

 

そして午後ですが、半蔵さんによる「操体でも経絡治療はできる」と言う発表です。
春は、ドラッグストアで買える漢方薬で、コロナ禍に対処するというオンタイムな話題を提供して下さいましたが、今回は「操体でも経絡治療はできる」という、これまた経絡に詳しい半蔵さんの発表です。

経絡治療と言えば、鍼やお灸を用いるものですが、鍼やお灸を用いずに、操体で経絡治療ができる、というお話です。

 

そして、午後のトリは、岡村郁生先生と瀧澤一寛先生による「バランス現象について」というお話です。

操体を理解するには、この「バランス現象」ということがとても大事です。

 

それでは、皆様のお越しをお待ちしております。

 

 

操体はカラフルである。

渦状波®(かじょうは)を、受けたり、足趾の操法など、無意識の世界に突入するような操体法を受けていると、色が見えることがあります。

 

私はあんまり色が見えることはないのですが、中には、施術が終わった後に「こんなのが見えた」と、教えてくれる人がいます。

 

いつも「へえー」と感心します。

からだが自分自身に、色を見せて「いやしている」のです。

 

色には不思議なちからがありますね。

 

一昨年、南会津で開催された「伝統療法カンファレンス」で、オーラ写真を撮りました。私は予想通り紫でした。 三浦先生は藍、翌日は白でした。

 

色の順は「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」白

というわけで、白は紫の外にあります。

そして昨年、私は白でした。

スピリチュアル的に高次に行ったのでしょうか(ふふふっ)。

 

フォーラム実行委員のT澤さんが、以前、サロン・ド・シマジでネイルをやってもらってすごく「気分がアガった」と言っていましたし、三浦先生もサロン・ド・シマジで、ラピスラズリ色のアートネイルをしてもらった時は、アガったとのことでした。

 

そして、島地勝彦先生は、親指にネイルアート(伊勢丹の包装紙の柄とか、国旗など)をして、あとの4本の指はピカピカに磨きあげ、透明のマニキュアを塗っていらっしゃいました。

なお、マニキュアといえば、何度か書いていますが、橋本敬三先生のご子息、橋本保雄さんは、ホテルオークラ東京に勤務しておられ、退職されてからは「橋本保雄氏がいなくなったら、オークラのサービスの質が下がった」と言われたくらいの名物サービスマンでした。

話が長くなりましたが、マニキュアは、紳士の身だしなみでもあったのです。

 

まあ、仕事柄マニキュアはダメな場合もあるでしょうが、甘皮を処理して、ピカピカに磨くくらいなら。。

 

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そうやって色に心を馳せていましたら、目に付いたのがこの本です

 

 この本は、イメージ別に3色の組み合わせが紹介されています。

勿論、再現できるように、色の数値もしっかり掲載。

ナチュラルとかポップとか。この本の表紙自体も「リラックス01 ほんわりくすみミルキー」という名前がついています。

 

ためしに、自分のサイトの色を少しいじってみました。

TEI-ZAN操体医科学研究所 Sotai Practitioner TEI-ZAN

結構ごちゃごちゃしていたので、多少すっきりしたかな、という感じはします。

これだけでも何だかすごい気分転換になります。

 

東京操体フォーラムのサイトも、シックな秋色にしてみました

https://www.tokyo-sotai.com

 

 

 

 

操体的ウエイクワード。操体には東北弁が向いている

ウエイクワードをご存知でしょうか。

iPhoneを持っている人は、Siriというアシスタントが入っているのはご存知だと思います(Macのパソコンにも入ってますね)。

 

ウエイクワードというのは、これらのアシスタントを起こす(起動させる)言葉です。

Apple系 Hey, Siri

amazon  アレクサ

Google OK,Google

ですね。

 

これ、やってみるとわかるんですが、ヘイとかOKは、結構勇気がいります(笑)。

 

アレクサ、も最初は恥ずかしかったんですが、慣れました。

もしかすると、Hey SiriもOK Googleも慣れかもしれませんが、ちょっと恥ずかしい。

 

日本人だも~ん(笑)

 

というわけで、私はもっぱら「アレクサ」です。

 

アレクサ、電気つけて
アレクサ、サラ・ブライトマンかけて(Amazonミュージックから掛けてくれる)
アレクサ、今何時?
アレクサ、今日の天気は??

 

とかなんですが、

 

Echo Dot (エコードット)第3世代 - スマートスピーカー with Alexa、チャコール
 

 操体にも「ウエイクワード的」なものがあります。

 

これは、「からだが起きる」「からだが反応する」言葉です。

「体感語」とでも言ったら良いでしょうか。

 

先日、受講生が「私もその言葉を臨床で使ったほうがいいんでしょうか」という質問がありました・

 

三浦先生は「自分が使いこなせる自信がなければ、使わなくてもよい」とアドバイスしていました。

 

本人が「こんな言葉、本当にからだが反応するのかなぁ」とか「今ひとつ自信がないなあ」という感じならば、使わないほうがいいです。

 

操体の臨床で、意外と忘れられがちなのが、言葉の使い方です。
からだは、言葉に反応します。

 

立て板に水、のように、すらすらっと言葉が出てくることがありますが、すらすらっと出てきても「からだに通じていない」ことがよくあります(みているとわかります)。

 

要は、立て板に水的に、すらすらっと話しているけれど、からだに伝わっていない場合と、一語、一語がからだに伝わっている場合は、あきらかに違うのです。

 

操体創始者橋本敬三先生は、さすが東北の人というか(私の父方の祖父、宮城生まれと話し方がそっくりです。年も同じくらいです)、「東北のおじいちゃん」的な話し方ですが、東北弁なので、立て板に水という感じではありません。

しかし、動画やラジオの声を聞くと、「からだに届いている語りかけ」であることがわかります。

 

また、我らが師匠、三浦寛先生の言葉の誘導は、選び抜かれた単語とタイミングに加え、からだに届いているというのがよくわかります。


これは「被験者(患者)」に語りかけているのではなく「からだ」に問いかけているのです。

 

これを、操体的ウエイクワードというのでは。

 

そして、その辺りには、ヒプノセラピーというか、橋本敬三先生が「意識を変える名人」だったということも繋がってくるような気がします。

 

治療室に入ってきた人をじろっと見ただけで、治したとか「またまた~」的な「橋本敬三伝説」がありますが、声をきいてみると「言葉かけ」で患者さんの意識を変えている、意識というか、無意識を変えることによって、治癒に導いているのではないか」と思ったりします。

そして、それは東北弁なのです(多分)。


西の方の方は「操体」をそおたい(博多弁のそうたい、そうたい、のサウンド)で発音しますが、「そおたい」「そおたいほお」ではなく「そうたい」「そうたいほう」なのです。

勿論、各地の言葉によって違ってもいいのですが、もともとの、橋本敬三先生の言葉かけは、東北のサウンドなのです。

 

私自身、この動画で橋本敬三先生の声を聞いた時は、話し方のあまりの懐かしさに、驚愕したものでした。

 

橋本敬三先生のなさっていた操体法を学ぶのであれば、是非東北弁で再現していただきたいと思います。

 

操体法/橋本敬三の世界[DVD]

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  • メディア: 単行本
 

 今は絶版のようです↑ 

 

 

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操体でも経絡治療はできる

2020年秋季東京操体フォーラムは、オンラインで開催致します。

 

www.tokyo-sotai.com

  • 操体法クロニクルズ(年代記
  • 般若身経から第一分析~第五分析まで
  • 三浦寛による第五分析の公開
  • 操体でも経絡治療はできる
  • バランス現象とは
  • 般若身経・操体法の指導法が抱える問題 

などをご紹介予定です。

 

畠山は「般若身経・操体法の指導法が抱える問題」について発表予定です。

これについては後程「発表者からひとこと」に記載しますが「操体の常識は一般の非常識」みたいなところがあるのと「歪み」の強迫観念とか、指導者が考えておくべき課題はたくさんあります。そのあたりをお伝えしようかなと考えています。

 

そして「操体でも経絡治療はできる」。

これは「快からのメッセージ」1999年刊行

で、我らが師匠、三浦寛先生が「城・灸をもちいなくとも経絡治療はできる」ということを書いています。

 

これについては、以前神戸の鍼灸学校の夏季講座に伺った時、鍼灸師の方が、皆驚いていました。

 

 今回のフォーラムでは「操体でも経絡治療はできる」と言うテーマで半蔵先生が発表します。

半蔵先生は、鍼灸師であり理学療法士であり、漢方の研究もしており、整形のクリニックに勤務していらっしゃいます。東京操体法研究会に参加したのは、20世紀の終わりよりちょっと前。

春のフォーラムでは、コロナ予防の観点からみた漢方薬の用い方を、市販のドラッグストアで買えるものを中心に紹介して頂きました。

 

今回もたのしみにしています。

 

 

 

操体において「歪み」は必ずしも悪者ではない。

操体・あるいは操体法を学んでいると「不自然の自然」という言葉を聞くことがある。

勉強していると、この言葉が染みつくんだなと思う。

 

最近、秋のフォーラム開催に向けて、古い動画を掘り起こしているのだが、数年前、関西で開催された、三浦寛先生の講義の動画が出てきた。

 

その中では、実行委員のT澤さんがモデルをやっており、非常に美しいフォームで、般若身経を演じている。


と、そこである人(操体指導者)が、彼の姿勢にケチをつけるのである。

彼は、背中を鍛える系のスポーツをやっていたので、背中が広い。よくボクサーなどは、前からみると普通に見えるけれど、背中からみると驚く程背中が広い、ということがあるが、そんな感じだと思って欲しい。

 

ボクサーとかって、背中の筋肉が発達しているので、見ようによっては、猫背に見えることがある、というのは想像できるだろう。

 

その、鍛えた背中を「猫背に見える」とケチをつけている動画をみながら思ったのは、

 

「この人は、操体を勉強してんのに、不自然の自然っていうことがわがんねぇのか?」「バランス現象を理解しとらんのか??」ということだった。

 

★流石に数年経っているので、理解してくれていることを切望する。不自然の自然、バランス現象を理解せずに、操体を指導するのは如何なものかと思う。

 

この動画は何度も見ているのだが、現場に居合わせた私は、昨日のことの様に思い出すのである。

 

さらに、以前来ていたクライアントの娘さんのことを思い出した。

その方は高齢の、腰が90度近く曲がったお母様を連れてきていたのだが、二回目か三回目の時、

「母はこのように腰が曲がっていますが、操体法で腰が真っ直ぐに伸びないでしょうか」と、言ったのである。

 

気持ちはわからないでもないが、この90度に曲がった腰が、このお母さんの自然な姿なのである。勿論、操体を受けて頂くことによって、少しは姿勢が変わるかもしれないが、ご高齢故、無理矢理骨格を矯正するのは危ない。

勿論、そういう矯正をするところがあるのは知っているが、私はそういうことはやらないし、操体関係者なら分かっていただけるだろう。

 

最近では、世の中の人達が、いかにして「歪み」を、悪いモノとして扱っているのかについて、改めて考えている。

 

ある受講生と話をしていて「歪みをとらなきゃいけない」という発言があったのだ。

  • 歪みは悪い。だから、歪みをとらなきゃならない
  • 左の股関節が曲がらないから、左の股関節が悪い
  • 今、姿勢が悪くて猫背なので、あと5年したらものすごく姿勢が悪くなるんじゃないか

操体では「左の股関節が右と比べて屈曲しにくい」というように、ありのままにみて、良い悪いの評価はしないし、可動域があるからといって良いとか、ないから悪いという言い方もしない。更に言えば「動かさないと固まっちゃう」という脅かしもしない

 

しかし、操体では歪みは必ずしも悪者とは考えていない。

 

なぜ、ボディが歪むのかというのは、橋本敬三先生の時代から、操体は明確な答えをもっている。

それは「最小限責任生活」である「息食動想」の四つのどれかのバランスが崩れたり、外部環境によって、ボディに歪みが生じると言っているのである

なぜ、歪むのかが分かっていれば、対処法もわかってくるし、相手(歪み)を目の敵にしなくてもすむ。

 

例えば、どちらかの肩が上がっていて、脊柱が弯曲して、骨盤が傾いていたら、それは、からだが健気にも「そこまでして立位を保っている」という姿勢なのだ。

 

また、首が左右どちらかに傾けば、目線を水平に保とうとするので、どちらかの肩を上げて首の角度を調整し、目線を水平に戻そうとする。

どちらかの肩が上がれば、人体は繋がっているので、脊柱や骨盤、下肢でバランスをとって、立位を保つことになる。

 

また、スポーツ選手などは、特定の部位を使うので、いわゆる「歪み」という点でみると、歪みが見られることもある(しかし、この歪みをとってしまうと、スポーツ選手としての技能が奪われてしまうこともある)。

 

 一般の方が「歪みは悪いモノ」「歪みは除去しなきゃならないもの」という刷り込みは根深いものがある。

 

まあ、悪いモノ、という恐怖感を与えたほうが、ビジネスは成り立つかもしれないが、それは操体的ではない。

 

「不自然の自然」「バランス現象」という言葉は、もっと噛み砕いて広めたいなと考えている。

 

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般若身経(2)型か。養生法か

東京操体フォーラム実行委員ブログより

****

 

私が「般若身経」に正面から取り組んだのは、三浦寛先生のビデオを撮った時だった。
あの時は、三浦先生と頭を捻った。
「般若身経、楽勝」だと思っていたら、ものすごくディープだったのである。
 
また、自分の講習会やフォーラムで「般若身経できる人」という人にやってもらっても、殆ど出来ていないことが分かった。
 
「あ、あのラジオ体操みたいなヤツね」と、甘く見られていたのだ。
 
三浦先生の姿勢は「健康体操」や「養生法」ではなく「身体運動の法則」だった。
 
からだの使い方、動かし方の基礎であり、あらゆる動作の基礎となるものだ。
 
なので、東京操体フォーラムでも「健康体操」「養生法」という意味ではなく「からだの使い方、動かし方の基本」と、捉えている。
 
そして私自身は、般若身経を
 
  1. 型(基本、ルール)であり
  2. 診断法であり
  3. 治療法である
 
と、捉えている。
 
1は、例えば左に側屈する場合だが。腰が右に移動し、右の母趾球に体重が乗る。
左の母趾球は支点となり、左の踵は軽く浮く。
これは、左側屈する際の、ベストなからだの動かし方であり、型である。
(ラジオ体操とは違って、重心の移動が行われる)
 
 
2は、診断法であるが、側屈の場合、左右ためしてみて、やりやすい方とやりにくい方の差がある場合がある。
これが「どちらがスムースで、どちらがひっかかるか」という、二者択一の(第一分析)の診断分析法になる。
 
 
第二分析、第三分析、第四分析、第五分析の診断分析法もあるが、ここでは割愛する。
 
3の治療法について。第一分析の場合は、やりやすい方、スムースな方へ、数回側屈を試してみて、その後、改めてやりにくかった方を試してみる。
大抵は先程よりもスムースになっており、左右のバランスがとれている
 
 
「型」と考えるのは、空手など、武術の型に通じるところがある。
道場では、最初からいきなり自由組み手はさせない。
まずは型を習得させる。
 
ここでよく話題にあがるのが、映画「ベスト・キッド」である。
 
オリジナルの映画では、ミヤギ先生がダニエルに車を拭かせる。車を果てしなく拭くという練習はつまらないし疲れるが、それが身についた時、それは技となる。
 
なお、ベスト・キッドの「正式な続編」として「コブラ会」というドラマがあるが、こちらにも初心者の男の子に床を拭かせるシーンがある。
 
そして、ジャッキー・チェンジェイデン・スミスの「ベスト・キッド」では、ジャッキー演ずる「ハンさん」が、少年ドレ(小さいドレ、ということで「シャオドレ」と呼ばれている)に、脱いだ上着を拾わせて、着せて、脱がせて、床に置き、また拾わせて、着せて、脱がせる。
 
というのは、ドレはいつも帰宅すると、上着を脱いでハンガーにかけずに、床に置きっぱなしにして母に注意されていたのだ。
しかし、ハンさんのところで毎日これをやっていたら、家でも自然に上着を脱いだらハンガーにかけるということができるようになっていたのだ。
 
型は、それが意識せずとも自然にできるようになるまで、練習することなのだ。
 
 
ちなみに、操体を勉強する場合にも、いきなり介助補助ではなく、最初は「般若身経(からだの使い方、動かし方)を習得するのがベストである。
 
 
標題の「型か、養生法か」というのは、どちらか一方だと決めつけるよりは、柔軟に使い分けができるほうがよい、と考えて頂ければよいだろう。
 
型が上達すれば、それがすなわち、診断法になり、治療法になるからだ。
 

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般若身経(1)膝の力をホッと抜くことの重要性

東京操体フォーラム実行委員ブログより転載します。

今回は、操体操体法を学ぶ人は避けては通れない「般若経」の話題です。

 

******

こんにちは。畠山裕美です。

般若身経とは、身体運動の法則(重心安定の法則:からだの使い方 重心移動の法則:からだの動かし方 連動の法則 と呼吸との相関性)を、操体創始者橋本敬三医師が
真実を語る短いお経、般若心経になぞらえて(ユーモアを交えて)命名したものである。
 
しかしご本人も書かれているが「このユーモアは理解されず」とあったので、「般若*心*経」と勘違いされたとか、あったのだろう。
私自身も「冗談やユーモアで使うとは、般若心経に失礼だ」と怒られたことがある。
 
そして、関西地方では多分「般若心経」系のとラブルがあったのだろう。この名前をあまり使わず「基本運動」とか、後述する、中味を変えた「基本動作」という言い方をしているようであるが、
実際のところ「般若身経」という言葉は、インパクトがあるので、使われ続けてきたし、操体実践者の間では、ポピュラーな言葉である。
 
なお、この「般若身経」自体は、橋本敬三先生によって、バージョンアップされている。
「中心集約運動」の頃はどちらかというと「鍛錬」のきらいがあり、年月を経るに従って「からだの使い方、動かし方の基本法則」の色が濃くなってくる。
 
般若身経は生きているのだ。
 
 
 
私が初めて「操体法」という言葉を知ったのは、高校二年の時、別冊宝島「東洋体育の本」を読んだ時だった。
その時は「なんか体操?」みたいな感じで、それほど興味はそそられなかったのだが、その後すっと経ってから「操体法治療室」を読んで、「操体法」という名前が甦ってきた。
 
25年前の自分を考えてみると、般若身経に対する理解もまだまだ甘く「基本運動」と、文字通りに受けとっていたのだと思う。
まず、膝の力をホッとゆるめると言う話は、私自身も習っていなかった。最初は、後屈の時はつま先に体重が乗ると書いてあったので、前屈の時は、逆になるので、踵に体重が乗るのかと思っていた。
しかし、前屈時、膝の裏筋が伸びたままだと「おへそを覗く」ことができないことがわかった。
色々しらべてみると「からだの設計にミスはない」に「膝のちからをホッとゆるめる」という記載があることがわかった。
 
私の場合、幸いにも操体を本格的に勉強する前に、太極拳を習っていた(日本チャンピオンになった先生である)。
その時に習ったのが「含胸抜背」(がんきょうばっぱい)という言葉だ。
 
これは、平たくいえば、腰を反らさずに、膝を緩めつつ、背筋は軽く伸ばすというイメージである。
 
腰を反らす→ 膝の裏筋が伸びる →骨盤が後弯曲(恥骨が後ろに行き、背骨が反る。腸骨稜が前傾)→ 胸を張る
 
という、いわゆるよい姿勢である
 
逆に
 
腰を反らさない → 膝の裏筋はゆるむ → 骨盤が前弯曲(後傾)→ 背中が丸くなる → 姿勢悪い
 
となるが、含胸抜背は、膝の裏筋がゆるみ、腰が反らず、なおかつ背筋は軽く伸びるという姿勢になる。
 
実際、太極拳を習っていた時、一番注意されたのは「お尻を出さない」(出っ尻にしない)ことだった。
 
長くなったが、私は太極拳を習っていたお陰で「膝のちからをホッとゆるめる」ということが理解できたのである。
 
なお、日本の伝統芸能や武術などでも、膝の裏筋をぴんと伸ばすものはない。
 
 
 
そして、後に知ったのだが、関西地方では「からだの設計にミスはない」が出る前の「膝の力をホッと抜く」という一言が加わる前の「般若身経」が広まっていた。
 
つまり、膝の裏筋を緩めないものが広まったのである。
 
それがよく分かったのが「基本動作」の「脇伸ばし」である。
これは、「側屈」に該当する。
 
関西の方に聞いてみると「側屈は股関節に負担がかかるので、側屈ではなく『脇伸ばし』になった」とのことだった。
 
確かにやってみるとわかるが、膝の裏筋を伸ばしたまま、側屈すると、股関節付近に負荷がかかる。
 
しかし「からだの設計にミスはない」にあるように「膝の力をホッとゆるめて」行うと、股関節には負担がかからない。
 
そして、膝の力をホッとゆるめる、という言葉が「般若身経」に加わったのは、昭和50年代の太極拳ブームもあったのだろうと考えている。
 
 

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