操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

般若身経についての説明(VisionS Vol.3 付録より

文責 畠山裕美 監修 三浦寛



般若身経





般若身経は、操体を学び、実践するにあたっては一番の基本となるべきものである。それは、からだの使い方(重心安定の法則)、からだの動かし方(重心移動の法則)を記したものであり、橋本敬三先生の中でも進化されていたという様子が、文献の歴史からも明らかに見られる。

自然体というのは、簡単な定義であって実は難しい。どのようなスタイルを自然体というのか。



・足は腰幅

・つま先と踵は平行に

・背筋は軽く伸ばし

・目線は水平正面に(目線の効用:後述)

・膝の力をほっ、と抜いて、拇趾の付け根あたりに体重がかかる



これが操体における、自然体を指す。



40年程前の、般若身経のガリ板刷りのものには(三浦寛先生が、橋本先生から直接いただいたものを見せていただいた。勿論、書籍などには収録されていない)『土フマズノ前端ニ心ヲアツメル』『土フマズノ前端デフム』と、いうような表記がみられる。つまり、拇指の付け根あたりに体重がかかる事を示している。



50年程前に発表された『集約運動』(『誰にもわかる操体法の医学』、に収録)は、ガリ版刷りのものとほとんど変わらないが、これには『土フマズノ前端ニ心ヲアツメル』とは書かれていない。



更に、一番売れていると思われる『万病を治せる妙療法』には

『足の土踏まずより前に心を置く』とは書かれていない。



『からだの設計にミスはない』で、はじめて『膝のちからをホッとゆるめる』という言葉が出てくる。



膝のちからが緩まるとどうなるのか?

『足の土踏まずの前方に心が置かれる』つまり、足の親指の付け根あたりに体重が乗ってくるのである。



これが何故大事なのかというと、膝をゆるめるかゆるめないか、

心を土踏まずより前に置くか置かないかで、足の体重のかかる場所が違ってしまうのだ。



その人が立ちやすいのが自然体、という解釈もないことはないが、

操体を学ぶ、あるいは他者に指導するという事は、自然体という言葉ひとつにしても、何故、橋本先生がそのように書かれたのか、再考してみる必要がある。

(誤解を招かないように加えておくが、ハンディキャップのある方や、大腿部が極度に発達した場合、あるいはボディに著しい歪みがある場合、腰背部に著しい湾曲があり、それでバランスを保っている場合は、この自然体をとることが難しい場合もある)



何故

足は腰幅なのか?

何故

つま先と踵は平行なのか?

何故

膝の力は軽く抜くのか?

何故、背筋を軽く伸ばして、目線は正面につけるのか?



その命、生命現象の営みのなかで、生かされているというイノチの営みを、何を学び、生活のなかで実践していかなければならぬのか

改めて考えると共に

「目線の効用」も考慮していきたい。





般若身経(からだの使い方、動かし方の基本:経典のようなもの)



からだの使い方=重心安定の法則:手は小指、足は親指

からだの動かし方=重心移動の法則



ここでは

前後屈(曲げる)

左右捻転(捻る)

左右側屈(倒す)の6つの基本について述べるが、その重心安定と移動の法則は

・基本であり

・診断法であり

・治療法

でもあることを念頭においていただきたい。

この6つの動きを理解することによって、動診という操体独自の診断評価法が生かされてくるのである。