操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

皮膚へのアプローチ(渦状波)

個人教授で操体の講習をはじめて、もうすぐ8年になる。

中には東京操体フォーラムの実行委員をつとめたり、長らく操体を通じてお付き合いがある方も多い。



それはさておいて、昨日の講習について。

理学療法士であるT君は非常に勉強熱心だ。

必ず質問を山のように持ってきて何が知りたいのかというのがはっきりしている。理学療法士として病院の整形に勤めている彼にとっては、多分毎日が課題の山なのだと思う。



というわけで、昨日のリクエストは皮膚へのアプローチ、皮膚に触れる操法である。



「皮膚操法」とか「カワの操体」という場合もあるようだが、私の場合は師匠に習い、「皮膚へのアプローチ」「渦状波(カジョウハ)」と呼んでいる。



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渦状波:運動系(ボディー)の外部をおおっている皮膚に原始感覚(快適感覚、きもちのよさ)有無をききわけ、操法としてとおしていく方法で、その問いかけに、てのひら全体を使う面の渦状波と、中指と薬指をつかった点の渦状波があります

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リクエストは「顔面への渦状波希望」。試してみることにした。



頭方に胡座をかいて、上からT君の顔(勿論、目は閉じている)をみると、右の瞼が左の瞼より腫れている。触れてみても痛みなどはないようだ。

右手の中指と薬指の先を、彼の瞼(目尻より)に軽く触れるように乗せる。押したり圧を加えたりするわけではない。肘が不安定になるので、膝で肘を支える。

不快な感じや違和感がないか確認しながら、感覚をききわけるように指示する。

暫くしてから「今、どんな感じですか?」と聞くと

「触れているところがとても温かくてきもちいいです」

「そのままきもちよさを味わって下さいね。何か感覚に変化があったら教えて下さい」



数分たってから「今、どんな感じですか?気分はいい?」と聞くと返事はない。完全にリラックス状態に入っている。

さらに数分すると、小さな寝息が聞こえてきた。

短時間ではあるが、身体が深い睡眠に入っているらしい。



瞼からそっと指をはなす。時間にして15分位だろうか。

目を覚ましたT君に感想を聞いてみた。

『最初は瞼が熱くなって、顔の皮膚がものすごく動いているような感じ。次は身体中がベールで包まれているような感じ』

最後は深い所に落ちそうになったらしいが、私が落ちるのを制御したらしい(笑)



皮膚へのアプローチは、動きの操法とは全く別の次元のきもちよさを、からだがつけてくる。

溶けてくるというか、沈むというか、人によって反応は様々だが、

結果的には皮膚へのアプローチは、深いきもちよさとカラダの解放を誘ってくるようだ。



こういう時、「きもちよさでよくなる」と「からだは治しをつけてくる」という言葉をあらためてかみしめる。