操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

治すことまで関与するな

ちょっと疲れたら、椅子に座ったままでいいから、背筋を軽く伸ばして右手を左手で外旋位にきめ、右上肢をゆっくりと感覚をききわけながら、伸展させる。ゆっくりやらないと感覚はわからない。

きもちよさが背中をとおって、右半身に伝わってくる。次に同じようにきめて上方に伸展させる。

これはもっときもちいい。



操体法、という名前がついたのは昭和49年だという。

名称については「名称なんてどうでもいい。真理が大切なんだ」「自然法則にのっとったことをやるのが大事なんだ」と橋本先生は言われたそうだ。

操体法の名称がついたのは、橋本先生が79歳の時。NHKに出るのだが、やっていることに名前がないのではと「気持ちがいいように体を操る」ところから名付けられたと聞く。

しかし、名称を付けたための弊害もある。一般の治療法と同じように見られてしまった。整体、カイロ、指圧、鍼灸、マッサージ…それらの一つとして、操体。治療法として見られるようになり、それが今も続いている。



先程あるサイト(手技療法のポータルサイト)を見ていて、サイト内検索で「操体」とひいてみたら「整体」というカテゴリの中に、オステオパシー、PNFと一緒に操体が入っていた。



操体の何が違うかというと、「治すことにまで関与するな」ということであり、被験者(患者)自身が(動かしてみて)感覚をききわけ【これが診断にあたる】、快適感覚があれば味わう【これが治療にあたる】。

そして、快適感覚を味わうことによって(自然法則にのっとって)歪みが正され、症状疾患が緩和・解消される。



「きもちいいことだったら、マッサージや指圧も気持ちいいじゃないですか」



という人もいないことはない。勿論、気持ちいい。ここで違うのは、操体は「動かしてみて」(勿論、本人が動けない場合のやり方もある)

「本人にしかわからない感覚をききわける」ということだ。



例えばマッサージや指圧は、寝ていれば施術者(操者、術者)が、コースにのってこなしてくれる。勿論、名人達人に当たれば気持ちいいに決まっているし、効果もあるに違いない。



しかし、これらは他力であるし、例えば背面から圧をかけるとか、背面からマッサージするとか順番や手順は決まっているはずだ。

(その手順の中に丹精こめた指技が、まるで茶の湯、華道のように凝縮されていることもあるのだが。。こういう場合はやはり芸術と言ったらいいのだろう。でも、名人達人がそんなに沢山世の中にいるわけではない)



操体では「息食動想」のバランスが崩れた時、ボディの歪みが起こる、と説いている。呼吸と飲食と運動、精神活動はお互いに補い合っている。この4つは自己責任というか自分自身で自律可能な営みであるから、このバランスが崩れるのは、本人の責任だとしている。



また、「良くなりたいのだったら、(からだの)感覚をききわけるという、自分にしかわからないという責任をおって下さいよ」とも言っているのだ。



つまり、マグロになって「さあ、先生、治してください」というわけにはいかない。

良くなりたいのだったら、自分にしかわからない感覚のききわけを行わなければならない。それがきもちよかったら、味わう。

それで良くなるのだ。



だから、「治してやろう」という人を見ると、すごいなぁ、と思う。