操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

偽善入門

偽善入門―浮世をサバイバルする善悪マニュアル

偽善入門―浮世をサバイバルする善悪マニュアル

先日の『煩悩リセット稽古帖』に続く、小池龍之介氏の本。

煩悩リセット稽古帖

煩悩リセット稽古帖

『煩悩・・・』にも少し書いてあったので興味が湧いたので読んでみた。例えば誰かが(誰とは言わないですけどね)『世界平和のために操体を広めよう』と言ったりすると『あ〜あ、何仲良しごっこで偽善ぶってんだろ』とかちょっとは思ったりしませんか?
(え?思わない?)
特にその人が世界平和をうたっていながら、喧嘩をふっかけるのが好きだとか、私を窓のない地下室に軟禁して脅迫まがいのことをするとか(あ?しつこいですね私も)、裏から手を回して『全国操体バランス運動研究会東京大会』の開催を邪魔するとか(あははは)したりというのを見ていると、『偽善くさ〜』とか思ったりするわけです。これは私が一重にまだ未熟者だからでありますが、
そうでなくとも、あまりに高尚でピュアなスローガンはこっぱずかしかったり、何だか偽善っぽく感じたりするものです。

この本はその「偽善」について仏道の角度から解説しています。
例えば、私がバレンタインデーに、ある人に奮発してプレゼントを贈ったとします。ところが、3月14日のホワイトデーは、デートどころか何だかすっかり忘れているようで、アメ玉ひとつ返ってきません。これに対して私が『私はあんなに奮発したのに!』と怒る。こんなことって有り得ますよね。
特に男性諸氏は誕生日を忘れたり、「記念日」を忘れがちです。
で、私がそのある人の前で別の男性からいただいた(笑)お返しのプレゼントを見せて『○○さんはお返しをくれたのに、アナタは何もしてくれないじゃん』とか文句をたれ、『うるせぇな』と、機嫌を損ねることになったりします。

しかし私が「いつものお礼と、自分があげたいからあげるのだ」と思っていれば別に仰々しいお返しが返ってこなくても何ともないハズです。

これはある程度マンネリ化または一緒にいるのが長いカップルによく見られることですが、要するに『私は120ポイントしてあげたのに、この人は30ポイントしか返してくれない、90ポイントも損してる、返せ!』、つまり心を野放しにしていて「相手い損をさせて自分が得をしたい」という衝動エネルギーに巻き込まれてしまう、ってことなのだそうです。

男女関係が末期症状にさしかかって参りましたときに、時として出てくる台詞(せりふ)を取り上げます。

彼女「あなたは私に何をしてくれたって言うの?何もしてくれてないでしょ?」
彼「そういうおまえは何をしてくれたんだ?こっちに『こうして、ああして』ばかり言って何もしてないじゃないか」

ありがちです。。これは本人達にそのつもりはなくてもどちらも『道徳』の説教となっています。相手はもっと自分の事を気遣って、自分のプライドを傷つけないように配慮すべき、だという「すべき」が道徳臭い、と。

つまり、「そうするのが正しくて当然なのに、どうしてあなたはその当然のことができないのか。あなたは間違った人間である。それぐらいできるようになりなさい」ということなのです。

相手に要求、つまりお説教をする心の裏には、「自分な何もせず、相手だけ優しくなってくれれば得だよな」というケチケチした欲望が隠れており・・

何だか鋭いではないですか。

こうやって、このお坊様は「偽善」と『道徳臭さ』について色々書いているのですが、「偽善」でもそれが言っていることの10%なのか、それとも半分なのか、90%なのかで変わってくるというのがポイントだそうで。何故かと言うと、100%の悪人がいないように、100%の善人がいないように、その割合によって違ってくるのだと。白黒とか、ゼロイチではないということです。例が書いてありましたが、ある方の会社は大層立派な社会理念を掲げていたそうです。その方が在社している時には『何だか偽善っぽいなあ、キレイごとだなあ』と思っていたのだそうですが、他の会社に転職したところ、そこは営業利益一本槍で、その方は以前の崇高な社会理念に守られていたのだなあ、と後で感じたのだそうです。確かに「世のため人のため」という理念を掲げているほうが、『金が全てで、うちの会社だけ儲かってればいい』という会社よりはいいですよね。。

なので、「キレイゴトは一応、キレイ」と見なさいと。

で、何も「100%キレイじゃなきゃダメ」と言ってるわけでもありません。人間には様々な欲望とか煩悩がありますが、それを無くすのが目的ではなく、それを上手くコントロールしなさい、と言ってるわけなんだそうです。

なので「三毒追放」とかになってくるわけですね。

これを書いていて思い出しました。会社員時代の同僚で、ご主人の海外駐在でNYにいる友人に主婦雑誌をEMS(海外速達郵便)で小まめに送っている人がいました。『いつもマメですね』と言ったところ『海外駐在だから、何か見返りがあると思って』という答えが返ってきて、非常に驚いた経験があります。また、それを臆面なく言える同僚が何だかものすごい人に見えました。実際、この方は『あの人に親切にされたら要注意』とか『見返りがないと絶対何もやらない』と言われていたので、徹底していたのでしょう。あの人が喜ぶから、なのではなく「見返りを期待しているから」なのです。