操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

介護と操体。

先日、ある依頼があり、要介護5という方のところへ、アシスタントとして随行した。

 

ご高齢の女性であるが、要介護になった原因は交通事故である。
長期間の昏睡を経て、奇蹟的に目を醒ました。
それまで元気に外出などしていたのだが、やはり寝たきりになると筋肉が落ちる。


依頼主は娘さんである。

色々調べた結果、操体がいいのではないかと思ったそうだ。

半分病院から見放された状態の中でも、手を尽くしている姿勢には頭が下がる思いだ。

 

また、あるトレーナーから「操体法がいい」と言われたとも。
(某大でボディビルの研究をなさっている先生からの情報だそうである)

 

娘さんは「膝を左右に倒して、瞬間急速脱力」というのを試したそうだ。

 

私はこれを聞いて、少し考えてしまった。

 

「膝を左右に倒して、倒しやすいほうに倒し、瞬間的に脱力」というのは、確かに操体の第一分析では、一番「有名」な操法の一つではある。

 

しかし、自力が不可能(要介護5だ)の、高齢の方にやるとすれば、介護者が、他力で、動かして、脱力の際も介護者が抜くことになる(多くの操体実践者は、膝の左右傾倒で、瞬間急速脱力後、どうやって支えるかというのを知らない)。

 

昔、某団体で「こういう操体をやっています」というのを見せて貰ったが、膝を倒して、数秒保持してから、操者が脱力とともに手を離していた。

 

これが、普通に動けるとか、体操教室とか、スポーツ関係者ならば、殆ど問題はないが、要介護であるとか、動けない人にやったらどうなるか

 

瞬間急速脱力とともに、操者が手を離したら、被験者の膝は、支えがない状態で、落下することになる。

 

これが、とても危険であることはお分かりいただけると思う。

骨折などの危険も伴う。

 

★実際、私が講義などでデモンストレーションでやると、皆「それは危ないです」と言う。見ただけで「危ない」とわかるくらいなのだ。

 

動けない、意識が半ば朦朧としているような場合、まず考えられるのは、足趾の操法®と、第三分析(渦状波®)だ。

 

操体の盲点は、「動けない人にはどうするのか」ということなのだが、これを解決するのが、第三分析(刺激にならない皮膚へのアプローチ)と、第四分析、足趾の操法なのである。

 

まずはここからだ。

まずは、足の指、からだの根っこにエネルギーをため、生命力に火をつけるのが先決だ。

 

そしてこういう場合、介護している側もとても疲れている。
ご家族のケアも不可欠なのである。
私が介護担当のご家族二人を担当し、足趾と全身の調整をした。

二人とも、見違えるように元気になった。

 

終わった後、被験者は普段座っていられないというベッドの上に、姿勢良く座って、
にっこり笑った。

 

まわりにいた私たちも驚いた。

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