操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

呼吸について。

私がからだと呼吸について真面目に考えたのは、12歳の時でした。

(内藤景代先生のヨガの本「こんにちわ、私のヨガ」)

内藤先生は、橋本敬三先生とも交流があった、沖正弘先生にも師事しておられ、沖先生が朝カルで講座を持っていた時、カバン持ちをされたそうです。そういえば私も三浦先生が朝カルで講座をやったときはカバン持ちをしましたっけ。

 

最近のヨガは色々あるみたいでよくわかりませんが、私が記憶しているのは、息を吐きながら動くポーズ(静止)が多かったということです。

イメージ的には、吐きながら動くと可動域が広がるとか、邪気的なものが出るみたいな感じです。

また「万病を治せる妙療法」に「ハラのすわった男になるために」のような、寝る前などに行う腹式呼吸が書かれています。ヨガっぽいですね。

橋本敬三先生の著書にも、赤門(鍼灸柔整)で教えていた時に、学生が持ってきた沖先生の「ヨガの楽園」が出てきて「沖先生のハードヨガで、自分のはソフトヨガ」的なこともおっしゃっています。

 

操体で息を吐きながらというのは、ほぼ沖先生の影響なんだろうなと思います。

ちなみに、ヨガで「息を吸う」というのがあまりないのは(あっても鼻から糸のように吸うとかそんな感じです)、ヨガ発祥のインドが、暑くて乾燥していて、息を思い切り吸ったら、呼吸器を痛めるからでしょう。

 

それはさておき、三浦先生の本にも書いてありますが、例えばぎっくり腰で痛みがある場合などに操体で「腹式深呼吸をさせながら動きをとらせる」というのは、酷です。

だって、痛いんですよ。痛い時って、お分かりだと思いますが、深い呼吸なんてやってられないのが本当のところです。

 

★ギックリ腰や寝違えで「あたたた」と言ってる人に「きもちよく動いて~」なんて癒えませんよね。そもそも怒られちゃいますよ。

 

こっちは痛いんだぞ~って(きもちよくなんて言ってる場合じゃないだろ)!

 

(言葉は、クライアントの状態によって使い分けます。ギックリ腰の方には、もっと寄り添った言い方をします。もし、第二分析を行うなら「この動きに、きもちのよさがききわけられますか?からだにききわけて、おしえてください」という「からだ」を主語にした問いかけを行います)

 

なので再度言いますが「すきなようにきもちよく動いて~」なんて指導している人は、実際にどこか悪い人とか痛めた方を診ているわけではなく、多分おそらくメイビーパハップス、健康体操とか健康維持増進のための養生をやっているのです。これは、操体の臨床とはかなり違います。

 

元気で健康で動ける人が、健康維持増進のために操体をセルフケアでやるのであれば、それでも構いませんが、

 

橋本敬三先生ご自身が、90歳の時に「呼吸は自然呼吸でいい」「呼吸を意識しすぎると感覚のききわけができなくなる」とおっしゃっています。

 

なので、我々は「自然呼吸」をメインにずっとやってきました。

 

しかし、しかしですよ、今の人間のからだは、自然呼吸でも間に合わなくなってきているんです。

 

ちょっと前までは「からだがつけてくる呼吸に合わせる」で良かったのですが、ここ数年は、からだと心のストレスが大きい(マスク生活もあると思いますが)ので、なんだか間に合わなくなってきたのです。

 

特に、コロナ禍に入ってから、人々の「呼吸」が変わってきました。

 

操体の歴史を見ても「楽か辛いかの二者択一(第一分析)」では間に合わなくなってきた(環境と人間の生活とからだが変わった。つまり、昭和40年代から50年代の農村などで通用したものが通用しなくなった)→ 「一つ一つの動きに、快適感覚の有無をといかける(第二分析)」(でも、パーキンソンとか動けない人はどうするの?動けない人に対して、操体は何もできないの??)→ 「橋本敬三先生は、皮膚も運動系に入れている。皮膚も8方向に動くじゃん!(第三分析@渦状波)」→ 触れなくても診断分析を通せる方法はないか(第四分析@息診息法)→ 今までの操体の常識を覆す(第五分析)と、進んできているわけです。

 

私の場合ですが、自然呼吸と、第五分析の呼吸を使い分けています。

 

臨床を行う場合は、柔軟な姿勢が必要です。

これじゃなきゃダメだという決めつけを外さなければならない時があります。