操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

「骨盤を立てる」の謎。

こんにちは。TEI-ZAN操体医科学研究所の畠山裕美です。

 

操体実践者が必ずやる(というかこれを知らなかったらモグリだろう)というのが

「般若身経」(「心」ではない)です。

これは、操体実践者ならば普通に使う用語です。

操体創始者橋本敬三先生が、この世の真理を説いた「般若身経」になぞらえて、ご本人はユーモアのつもりで命名したようですが、「心」と、勘違いして、怒った方もいたようです。

特に関西地方で誤った伝わり方をしたようで、関西地方では「般若身経」といいう言い方を避けるところもあるようです。

 

また、スペイン在住の方に聞いたところ「はんにゃしんぎょう」と、音は同じなので、

スペインの方は、操体は仏教?みたいな勘違いをしていた方もいました。

 

ちなみに「般若心経」は英語で Heart Sutra  と訳されていますので、私は「般若身経」を、海外向けには「SOTAI Body Sutra」だと伝えています。

 

 

 

本題です。

 

最初に、操体で言う「骨盤の前弯と後弯」について説明しますね。

(私のサイトの「用語解説集」から引っ張ってきました。

 

今は「前傾・後傾」というコトが多いのですが、橋本敬三先生の時代は、恥骨を基点にしていたので、「前弯曲・後弯曲」と言います。我々は橋本敬三先生にならって、そのまま使っています。

たまに、受講生の中でもずっと勘違いしていたという人もいるので、これについては、講習のはじめにこの図を使って説明しています。

 

骨盤の前弯曲と後弯曲。最近の「前傾・後傾」とは逆です。

 

これは、橋本敬三医師が用いていた用語である。
(大正10年に医師免許取得)。恥骨を中心に考えている。

前弯曲というのは、恥骨が前方に移動し、腰椎の反りが減っている状態、後弯曲というのは、恥骨が後方に移動し、腰椎の反りが強くなっている状態を指す。

現在では、腰椎の前弯曲、後弯曲、あるいは骨盤の前傾、後傾(こうけい)と言う事が多い。
骨盤の前傾、後傾は、腸骨棘を基本にしているので、前傾、後傾とは逆になることに注意していただきたい。

 

ちなみに、操体をやる場合、操者は「骨盤が反らせません」「座骨を立てたりはしません」。つまり、腰を反らせて出っ尻でやるのはNGです。

 

操者(臨床家)です。

患者さんは関係なし。

また、私はアマチュアの方にはここまで求めません。

 

なぜNGか。患者さんの動きについていけない、身体を操体的に操れない、上達が遅いなどのデメリットがあります。

 

つまり、操体の上手い下手は、骨盤の使い方に関わってくるということです。

 

 

さてさて、私は曹洞宗で在家得度(出家得度ではありません)した在家の仏弟子です。

曹洞宗なので、坐禅もやります。

 

その時にとっても不思議だなと思うことがあります。

どなたか、坐禅の専門家で詳しい方がいたら教えていただきたいのです。

 

というのは、坐禅に行くと「骨盤を立てる」とか、そのような指導を受けることが多いのですが、道元禅師の普勧坐禅儀などを読むと

www.soto-kinki.net

 

すなわち正身端坐(しょうしんたんざ)して、左に側(そばだ)ち、右に傾き、前に躬(くぐま)り、後(しりえ)に仰ぐことを得ざれ。
耳と肩と対し、鼻と臍(ほぞ)と対せしめんことを要す。
舌、上の顎(あぎと)に掛けて、唇齒(しんし)相著(あいつ)け、目は、すべからく常に開くべし。

 

と、書いてあります。正身端坐とはありますが、骨盤を立てろとは書いてないわけですよ。

 

いつから、誰から「骨盤を立てる」という指導が入ったか、ということです。

 

で、もう少し気になるのは、

日本的なスポーツや伝統芸能は、柔道もそうですが、腰は反らせない(骨盤を立てない)んです。

一方、西洋的なものは腰を反らせますよね。

三浦先生から聞いた話だと、アマレス選手が柔道をやって、受け身の際に反り腰で受けて怪我をしたという人がいたそうです。

レスリングは腰を反らせるというのはわかります。

 

ざっくりわけて、和風は骨を反らさない(我々の言い方だと「骨盤の前弯曲」)、洋風は骨盤を立てる(反らせる)となりそうです。

 

★以前、スペイン在住の方に聞いたところ、あちらの方は、ヒップアップ、つまり骨盤が後弯曲(前傾)していて、椎間板ヘルニア持ちは四割くらいだそうです。元々反り腰の皆さんなんですね。

 

そして、確かに仏教というか坐禅は元々はヨガなので、インド発祥、中国を経由して、

日本に渡来したわけですが、経由地中国はと言えば、

 

わたくし、太極拳を習っていました(先生は後に日本チャンピオンになった方です)。

その時は23、4歳くらいでしたが、いつも先生に「お尻を出さない!」と叱られていました。

 

 

なお、この時よく訓練したのが、壁にかかと、ふくらはぎ、お尻肩甲骨、後頭部をつけて立ち、腰から背中の隙間が壁につくように、骨盤を調整するのです。

やってみるとわかりますが、膝の力を少しゆるめないと、この姿勢はとれません。

 

そうなんです。この姿勢、背筋はまっすぐ伸びますが、腰椎も反らせず、骨盤も反らせずに、膝のちからを軽く抜く。

 

足は腰幅、つま先と踵は平行に。背筋は軽く伸ばして目線は正面の一点に据え、膝の力をホッと抜く。。。

これは我らが「般若身経」の「自然体立位」ですが、太極拳の「起勢」にも通じますし何よりも「含胸抜背トレーニング?」にも通じます。

 

 

この問題は引き続き。。