最初に断っておきますが、これはある特定の方を批判しているとか、そういうことではありません。
身体能力の高い指導者が陥りやすいことを書きました。
ちなみに、東京操体フォーラムにも、総合格闘家の平直行氏や、ウォーキング指導をカルチャーでされている草階文恵女史もおりますし、スポーツ指導をしているメンバーは多くおりますが、少なからずフォーラム実行委員はそのあたりはきちんと踏まえて指導を行っています。
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先日初めてお会いしたクライアントの方です
皮膚へのアプローチを行ってみました。
途中から「きもちよさがききわけられます」とのことで、
「それでは、きもちよさを十分味わって」と伝えると、何だか
もぞもぞ動いています。
もしかして、きもちよさを探して動いてるのですか?と聞くと
そうです、とのこと
そうじゃないんですよ、と言うと
え?そうじゃないんですか???
だって、探してみてわかります?
・・・わかりません
でしょう?
あと、「きもちよく動いて」と言われて、動けなかったらどうするんでしょう??
操体っていうのは『(ある動きを試してみて)感覚をききわけ(診断)味わう(治療)』という行程なんです。
動きには「この動き」、例えば手を外側に回すとか、前屈するとか、目的があるんです。
最初から『きもちいい動きを探して動いてみる』っていうのは、
その順番に適ってませんよね?
これって、実際に試してみるとわかりますが。
動きを探す、探るんじゃくて、最初はある動きを末端からからだの
中心腰、腰から首、全身へとゆっくり動いて、感覚をききわけるんです。
へえ。。。
聞いてみると、他所で操体を受けておられたのだそうです。
聞いてみると、私がその昔少しだけ教えた方でした(汗)。
★またかよ・・・という感じも少しあったりして(汗)
★実際、そうなんですけどね。
私が教える前に操体を習っておられたのをそのまま踏襲しているのと、持ち前の身体能力の高さで『操体とはきもちよさを探して色々動く』ということを
生 ま れ た て の ひ な 鳥 の よ う に、
インプットされてしまっているのです。
師匠や私が『きもちよさを探して動くのではなく、動いてみて、
快適感覚があるのかないのか、からだにききわけるのがその行程だ』と、何度言っても
最初にインプットされた情報のため、
『きもちよさを探して動く操体があってもいいじゃないか』ということでした。
★大汗です・・・・
それなら『操体』を名乗らずオリジナルを作って『○○式ナントカ法』とすればいいのですが、やはり『操体』という名前は使いたいようです。
また、『朝起きたらきもちいいように色々動いてみればいいんですよ』という指導をされていると聞きました。
これは、患者様(あるいはからだにとって)実はとても不親切なことなのです。
★すいません、ちょっと憤慨してきました(笑)
この方と、この方に『操体はきもちよさを探して色々動く』と教えた方(私も知っており、私の影響で操体を始めた方ですが)には共通点があります。
武術やスポーツに秀でており、身体能力がとても高いのです。
★今となっては、操体を学ぶきっかけを与えてしまったことを、ちょっと『まずかったなぁ』と思うくらいです。師匠や私の手を離れてしまっているので、御するに御せません。まあそれは仕方ないのかもしれませんが、
★私にも少なからず迷惑はかかっているわけです(笑)
★『きもちよく動け』って言われてもわからない、と言われて私の所に来る方も多いわけですから。
そして、『楽ときもちよさ』の区別がついておらず、無意識の動きと有意識の動きを一緒にしているということです。
痛みから逃げる逃避反応は無意識の動きですが、『きもちよさを探して色々動く』というのは、有意識の動きです。身体能力の高い方は、この辺りが曖昧な場合があります(だから身体能力が高いって言うんですけど)
そして、『朝起きたらきもちいいように色々動けばいい』という指導が何故不親切かと言うとですね・・
身体能力の高い方は、ある動きを試すと、快適感覚が即聞き分けられる場合があります。また、自然とからだが動いてくる場合もあります。この現象は、身体能力が高い方の間では、結構よく起こりうる事なのです。
★平直行さんは、『自分はそのよう(きもちよく)に動けてしまうから、気をつけて指導している』と言われてました。草階女史も同様です
しかし、一般のクライアントの方々は身体能力にも差がありますし、最初はどうやって動けばいいかわからないし、動こうにもそのコツが分かっていないし(だから、操者の介助と言葉の誘導が必要なのです)、単に動いてみて快適感覚のききわけが可能であるという割合は非常に低いのです。
100名クライアントが居られたら、95人は分かりにくいのです。私の経験から言ってもそうですし、多くは『きもちよさを探して動いてと言われてやってみてもよくわからない』と言います。
身体能力の高い方が、自分ができるからといって『きもちよく色々動いて』と、指示するのが不親切だというのはこういう意味があります。
『きもちよく動いて』ではなく
『ゆっくり動いて(きもちよさがききわけられるのか)からだにききわけて』
と、指示するのが(あるいは自分で行う場合でも)妥当です。
プロだったらその違いを認識して、患者様やクライアントに接していただきたいのです。
それを曖昧にして、「きもちよく動けないのはオマエのせいだ」
と言うのは患者様やクライアントに対して失礼ですし、操体に対しても失礼です。
★すいません・・ちょっと興奮しました(汗)
自分が運動神経があまり良くないので言うわけじゃないんですが(汗)、操体を指導されており、スポーツクラブ等で指導されている方がやはり何人かは『きもちよく動くでいいじゃないですか』
『きもちよさを探して、でもいいじゃないですか』と言う方もいました。往々にして、身体能力が高い方々です。
一度、インプットされてしまったものは、なかなか変えられないのですね
逆に言えば、悪い人を診てないから、これでも間に合ってるケースが多いのです。スポーツクラブにエクササイズをしに来る方は
まず動けるし、武術の道場などに来られる方もまず動けます。
動ける人だったらこれでも(きもちよく色々動いて)でも、ごまかせます。
例えば、ぎっくり腰とかで寝込んでいる方(つまり八方塞がり)に対して『きもちよく色々動いて』って言えるでしょうか???
私にはできません。
私たちが診るのは、やはりどこか不調を抱えて深刻なケースが多いので『きもちよく色々動けばいいんです』とは言えません。また、それでは臨床は成り立ちません。
『きもちよさを探して色々動いて』とか『きもちよく動けばいいんですよ』と言われて、『わかんない・・・・』と感じても、それはあなたが悪いのではなく(中には『操体をやる資格がないんでしょうか・・・』と、落ち込む方もいますがそんなことはないのです)それは、指導者の責任です。
そういう指導を今現在されている方々が、少しでも早くその行程に気づいて頂ければいいのに、と心から思います。