10月18日(木)、 Hotel Weare Chamartin の Room Madridで操体のセミナーが始まりました。四日間合計30時間。
スペイン、イタリア、オランダ、チェコなど遠方からの参加者も。
今回、実際に聞いた話ですが、イタリアでは操体が治療家の中で操体がちょっとしたブームのようです(現地リサーチ)。
この辺りはかなり詳しく聞きました。
初日は「操体って何だ」ということをスライドを使って説明しましたが、一番のポイントは、操体と他力的手技療法の違いの説明です。
「操体は、治療者と患者の二対一ではなく、操者と患者と患者のからだの三位一体」ここと、楽な動きと快適感覚の違い。
快を英語でpleasure と訳していますが、これをスペイン語にすると、多少セクシュアルなニュアンスになるそうで、快というのは「そこら辺の色んな快」というよりも、操法のプロセスにおける快なのだという説明です。
このあたは、日本に操体を勉強しに来ており、ニュアンスがよくわかっている大悟君(スペイン生まれの日本男子)が明確な通訳をしてくれました。
やはり、通訳の存在は重要で、日本で三浦先生の元で、日本の若手と一緒に操体を勉強した経験は重要だったようです。南会津の伝統療法カンファレンスも一緒に行ったし、
三浦先生、フォーラムの仲間とは、それこそ「ハダカの付き合い」の仲ですから。
また、第一分析時代の「首」へのアプローチは、大凡首の運動分析をして、楽な方へ動かして脱力に導くものです。
(しかし、橋本敬三先生は「万病」で「四十肩五十肩は足首の操作で治る」と書いています。橋本敬三先生の時代から、遠隔的操作という考え方はあったのです)
しかし、症状疾患があるところを直接動かすのは、はっきり言って「素人」です。
私が受講生に「左足首を捻挫したクライアントに対し、どうやってアプローチするか」という方法を伝えたところ「なるほど」と、皆頷いていました。
(みんな、情報は知っているのですが、どうやって使うか、あるいは、想定外の場合どうするか、という「創造」に慣れていないのかもしれません)
★操体は「症状疾患にとらわれない」、つまり「肩こりに効く」とか「腰痛に効く」とか「膝の痛みに効く」操法という考え方はありません。
★これが、操体のもう一つの特徴と言えます。
★我々は常に「想定外」を考えています。
伏臥位での腋窩挙上の動診をしたいのに、被験者が伏臥位をとれなかったら?
膝の左右傾倒をしたいのに、左右どちらも痛みがあり、動かせなかったら?
全身に痛みがあり、からだを動かせなかったら?
(このあたりは、このブログにヒントをたくさん書いているので、読んで下さっている方ならば「あ!わかった」と閃くかもしれませんね)
★ボディの歪みを正し、バランスを整えることによって、二次的に愁訴を解消する、というのが、操体の臨床です。
さて、実践です。
首が痛いからと言って、首を左右捻転させて楽な方に動かして瞬間急速脱力させるよりも、遠方(四肢末端)から首の動きを導く方法などを紹介、そして、限りなく第二分析に近い「D1'」を指導しました。
「抵抗」ではなく「介助・補助」であること。
運動分析に加え、感覚分析も行うこと、などなど。
そして、三日目は「頸部へのアプローチ」をやりました。
今回、やはり「頸部」と「肩」へのアプローチの希望が多かったようです。
操体は「症状疾患にとらわれない」という基本がありますが、長年やっていると、
およそ「頸部にはアレがいいかな」とか「肩だったらアレかな」というのがあります。(三浦先生と私は、それぞれ違うネタだったりします)
例えば、足趾の操法®ですが「四十肩五十肩ならこれだよね」というのがあります。
長年やっていて、色々試してみましたが、やはりあるんです。
まず、私が「肩の部位を狙い撃ちする操法」のデモンストレーションを。
これも速効性がありますが、やはり部分だけではなく、全身を整えてからという条件がはいります。
「痛くない〜!」と、これだけ喜んでやっていても、すぐ戻るということです。
「すぐ戻る」ということを如何に防ぐか。それも大事です。
さて、三浦先生の実技指導です。
四肢末端の動きから、全身の連動を導誘し、「首」に手をかけずに頸椎の調整を行いました。
まず、三浦先生が、被験者の足元方に立ち、アシスタントを務めるマドリード在住のPTであるTさんが頭方に座ります。
三浦先生が「C3の横突起」という箇所にTさんが触れると、確かに圧痛硬結があります。
参加者は「何故、触れないのに分かるの?」と、頭を捻りますが、頚椎及び肩近辺のアンバランスは、触れなくとも、分かります。
被験者の中に、交通事故によるむち打ちで、数年来の不調を抱えているメンバーが数名いました。
こちら、行ったのはD1‘ でしたが、途中から、からだの無意識の動きと快適感覚がききわけられ、長年の悩みが解消しました。
会場の参加者は一様にショックを受けたようです。
会場内には、マンガの吹き出しではないですが「ショック」「どうして??」という単語が溢れていました。
こちらの方は、感情の解放もストレートです。
私などは「感情を解放しているんだな」と「傍観」の立場を取りますが、うっかり「可哀想だな」とか「怒りを解放、つまり、怒りというネガティブな感情を解放しているんだな」というように、可哀想だとか、ネガティブな感情=悪い というように捉えると、操者が「被り」ます。
私自身は、操体にせよ易にせよ「”被る”のはプロじゃない」というのがポリシーなので、「被らない方法を伝授します」と言いましたが、今回は時間がありませんでした。
からだの無意識の動きについては、参加者は相当驚いた(ショックを受けた)ようです。
私が「頭蓋仙骨療法の、体性感情解放(ソマト・エモーショナル・リリース)とは違うし、野口整体の活元とも違う」と説明すると、頭蓋仙骨療法をやっているという参加者が「確かに違う」と言っていました。
そこで、三浦先生が「僕にしか出来ないことは教えない」「みんなにも出来ることだ」と、受講生を激励。
私も「できるようになった」一人なので「クライアントと対話するのではなく、からだと対話、からだと仲良くすることができれば、できるようになります」と、受講生に伝えました。
これには皆驚いたようでした。
翌日、前日に操法を受けた受講生一人一人に現在の状況を確認し、感想を聞きましたが、昨日よりもさらにすっきりしたとのこと。
「終わった瞬間よりも、翌日、翌々日に変化がわかるのが、操体なんです」
最後は、「足趾の操法®」。横足根洞、足底、指骨間筋を練習しました。
この場合も、デモンストレーションの最中に、快適感覚が聞き分けられて、無意識の動きが発動する人が続出しました。
四日間、長いようで短かったです。
小野田先生はじめ、スタッフの皆様、本当にありがとうございました。
「やはりヨーロッパではホンモノの操体を紹介したい」という小野田茂先生(日西指圧学院、浪越ヨーロッパ代表)の熱意により、素晴らしいセミナーを開催することができました。
合掌