その昔私は「からだの声を聞く」という表現が好きでした。
そして最初の本を書いた時、「何でもためて、ストン」というのはどこかヘンだと思うようになりました。
どうしてヘンだと思ったのかというと、それは「直感」としか言いようがありません。
自分でやってみてもわかりますが、瞬間脱力って、結構技法がいるし、やってると疲れたりします。疲れている時などは、やりたくありません。
逆に「ゆっくり脱力して」「ふわっと脱力して」というのもありましたが、これもなんだかしっくりこない。
確かに言葉的には柔らかいものがありますが、ちょっと違う。
私のアタマに浮かんだ疑問は
「からだの声をきいてるなら、なんで瞬間的に、とかゆっくりって指定するんだろう」
ということでした。
となると「からだの要求に従って」とか「からだの声に従って」という言い方のほうがぴったりです。
ある時、関西の仲間から聞いた話です。
いらっしゃったクライアントが「私は瞬間脱力ができる」と、胸を張っていたそうです。話によると「瞬間脱力はテクニックが要るので、できるのは上級者である」みたいな感じだったそうです。
その通り。瞬間脱力は結構テクニックが必要です。
そして、橋本敬三先生がホテルオークラで行ったセミナーの映像がありますが、会場にいた男性をモデルにするのですが、被験者が脱力できないので、橋本先生がちょっとキレるという映像です。この男性、何度言っても脱力できないのです。
橋本敬三先生も「瞬間脱力させるには、手こずっていた」ということです。
しかし、映像などをみますと、瞬間的に抜かせるといっても、正體術のように、脱力前に「ウサギの毛ほども動かさず」というように、力を入れて抜かせるというよりは「ポタッ」とか「しずかに、しずかに(ゆっくりということを言っている)、はい、ポタッ」とかおっしゃっているのでギューっと踏ん張ってとか、そういう感じではなさそうです。
また、自分の周囲の年上の方を被験者にすると、やはり急には抜けない。
こうなってくると、操体の目的が「ラクなほうに動かす」ではなく「脱力させること」になってしまいます。
しかし「瞬間急速脱力」に慣れていると、「からだの要求に委ねる」事がなかなかできません。つまり、からだの要求に委ねるまで、待てない。
かといって「ゆっくり抜いて」というと、「ゆっくり抜け」という操者のオーダーになってしまい、からだの要求に合っているとは限らない。
そうなると、やはり「からだの要求に従って(言い回しは色々あります)」というのがベストだよねと思います。