中学生の頃、夢中になって読んだ本が、密林で電子書籍となって私の前に再び現れた。
素敵な再会だ。
リチャード三世と言えば、シェイクスピアの戯曲でも醜悪な悪人として描かれている。
私が同じ頃読んだのは、森川久美の「天の戴冠」だったが、こちらはリチャード三世を悪人としては描いていない。
この本は、いわゆる「車椅子探偵」(足を骨折して入院注の刑事)が、書籍など、普通に手に入るものを使って、リチャード三世は兄の子供を殺して王位についた極悪人ではない、ということを解き明かしていくという話だ。
なぜ、リチャード三世は悪人として描かれたのか?それは、タイトルの「時の娘」にもあらわれている。
Truth is the daughter of time.
真実は時の娘。
歴史は、常に勝者によって作られる。
リチャード三世の悪人のイメージは、後のチューダー朝によって記された虚構が「歴史」として現在も流布しているのだというのが答えだ。
似たような話で、徳川慶喜は、戦争をせずに負けを認めたようなことを言われてきた。しかし、近年では、慶喜公が戦をせずに江戸無血開城したのは、戦が起きれば江戸が火の海になる事が分かっていたからだと言われている。つまり、江戸を救ったのである。
当然ながら、明治の新政府は、慶喜公を良くは言うまい。
歴史は勝った者が編集する。そして作られる。
そしてもう一冊。
昨日、東京操体フォーラム実行委員の勉強会にて、T澤さんが色々興味深い「謎解き」をしてくれた。その鮮やかさは、この本を思い出させたのだ。
これは、「義経成吉思汗伝説」を解いたものだ。先の「時の娘」同様、神津恭介がベッドの上で謎を解く。
私は元々判官贔屓なもので、この本は心に染みた。
この二冊はミステリーの名作と言われているものだが、名作は何度読んでも新鮮なものだ。