操体のセルフケアについてお話しましょう。
我々東京操体フォーラム実行委員とかですと、鍛錬を積んでいるので「指1本動かしただけで、全身に連動が行き渡り、快適感覚を味わうことができる」(つまり、坐ったまま、指一本うごかすだけで全身に連動が行き渡り、きもちのよさを味わうことができる)というスキルを習得しています。
実行委員じゃなくても、コツを学んで体得していれば、できるんですよ。
ここに紹介するのは「操体の3つの場」というものです。
操体を健康の度合いによって三段階にわけてみました。
その前に、操体に関するイメージが、人によって全く違うことを知っておいて頂きたいと思います。
ある人は「治療法の一つ」と言うし、ある人は「自分でできる健康体操でしょう」と言います。
これは、操体の一つの側面をみているに過ぎません。
私がいまでも覚えている印象的な出来事があります。
東京操体フォーラムのメンバーで、某ジムで操体のセミナーをやった時の話です。参加者の中に、人の肩を借りてやっと歩いてきたという人がいました。重度の脊柱狭窄症だそうです。セミナーの最中も辛そうに横になっていました。
彼は「操体は自分で治せると聞いたから」と言っていました。
しかし、彼の状態は「セルフケアで、できるところを越えていた」のです。
操体で何でもセルフケアできるわけではありません。
「セルフケアできる範囲まで」です。
下の図を見て頂くと、一番下が「自力自療で行う操体法」で、二番目が、少し見えにくいですが「サークル、フィットネスクラブなどで、不特定多数に指導する操体」、三番目が「臨床家が1対1で行う操体」と書いてあります。
もう一つ。
「操体って、自分でできるんでしょ。それなら操体の治療家はいらないんじゃないの」という人もいます。
なぜ、操体の施術者(治療者、指導者)がいるのかというと、「セルフケア、自力自療では、間に合わない人を、自力自療の操体ができるレベルまで、引き上げるお手伝いをする」のです。
先の脊柱狭窄症の方は、まずプロから操体を受けるなりなんなりして、セルフケアできるところまで、健康度の度合いを40パーセントくらいには上げることが必要です。
そこまで行けば、あとはセルフケアできます。
健康の度合いが10とか20とか、自力自療がかなわない状態で「自分でできる」「セルフケアできる」というわけではないのです。
私は「暴れない胆石持ち」なのですが、知りあいから「操体で胆石は治らないのか」と言われて気がついたことがあります。
あ、そんな風に思うんだ。ということです。
操体をやっていても、年はとるし、胆石はできるし、尿結石もできるし、風邪は引くし眼圧は上がるし、血糖値だってあがるし、ガンになったり、パーキンソンになったりします。
一病息災(一つぐらい持病があったほうが、かえって健康に気をつけて、長生きできるということ)で、いいのではないでしょうか。
しかし、操体をやっていると、原始感覚が磨かれるのと、自己治癒力がアップするので、症状疾患を得ても、そんなに悪くならないというのが実感です。
そして、操体自体はからだに強刺激を与えるわけではないので、西洋医学と併用しても問題ありません。