操体法大辞典

操体の専門家による、操体の最新情報など

はじめての操体法(序)

こんにちは。TEI-ZAN操体医科学研究所の畠山裕美(はたけやまひろみ)です。

 

操体法東京研究会の定例講習(こちらはプロの操体指導者を養成する講座です)も新しいタームが始まります。

 

そして

「はじめての操体法」というのは、これからセルフケア、メンテナンスのために操体をやってみようかな、という皆さんのヒントになれば良いなと思い、書いてみることにしました。

 

ちなみに、

「私は格闘技を本を読んでyoutubeを見て勉強したので強いです」という人、どうですか(笑)。

「私は格闘技を○○道場に通って、○○先生のもとで修業しました」という人のほうが本物っぽくないですか?

 

操体も同じです。体をつかった実技なので、本や動画では伝わらないのです。

 

操体操体法

ちなみに「操体」は『操体の世界全体、橋本敬三の哲学や死生観も含んでいる』と考えてください。「操体法」は、その中の「治療」や「身体論」という一部を指しています。大抵は「操体法」だけ知りたがりますが、生活および人生に活かすものですから、「操体」という大きな括りでみたほうが、学びが深まると思います。勿論、さらっと操体法、でもいいんですけどね。

 

セルフケアできる範囲と、そうでない範囲がある

ちょっと指を切ったくらいなら、ばんそうこうを貼って済みますが、これが指を落としちゃった!となったら、やはり病院に行きますよね。

 

以前、操体セミナーをやっているときに、脊椎狭窄症で動けない方が、這うようにして会場に入ってこられたんですが、その方が「操体は自分で治せるって聞いたから」とおっしゃり「いや、その状態ならばやはりまずは専門家(三浦先生のところとか)に行って、自分で治せる(自力自療が可能)状態になってからです」と伝えたことがありました。

 

 

ラジオ体操と太極拳の違い

操体創始者橋本敬三医師は、患者さんには「簡単ダヨ」と「毎日ちょこちょこやりなさい」と指導していました。

しかし、弟子達には「よくもこんな難しいものに足をつっこんだな(でも、操体は面白いぞ。一生たのしめるからな)」とおっしゃったそうです。

 

操体は、

専門家の助けを得て受けるのは、ハードルが低い
操体を一人でやるには、まず受けてみる、習ってみることがベスト

 

と、考えます。

 

ちなみに中見出しに「ラジオ体操」と「太極拳」をあげました。

この違いです。

まず、

 

  • ラジオ体操は見よう見まねでもできるが、太極拳はできない
  • ラジオ体操は動画などを見ながらでもできるが、太極拳はそうはいかない

 

太極拳をやったことがある方なら「そうだよね」と同意していただけると思うのですが、太極拳って、見た目は簡単そうに「みんなスイスイやってるじゃん」と思いますが、実際にやってみると、

非常にキツイ。

 

操体でも「足趾の操法®」とかを見て「簡単そう」と、真似をすると、「全く違うことをやっている」「手や肘や肩を痛める」ことになります。

 

そして、何故、マダム達が太極拳を優雅にスイスイやっているかというと、鍛錬を積んで時間をかけて反復しているからです。

昔のウーロン茶のCMで太極拳を舞ったのは、バレリーナだったそうですが、確かにバレリーナならば、数日特訓すれば太極拳は再現できるかもしれません。

 

そしてもう一つ。

操体法には「基本運動」(通称:般若経)と呼ばれる「型」のようなものがあります。

見た目は「簡単じゃん」と、ラジオ体操レベルで考えるのですが、実際に、これをちゃんとできる人は、あまりいません。

イベント等でみても「大枠だけはどうにか」というレベルです。

 

さらに「般若身経」は、簡単だと思われすぎているのか、大抵は甘く見られており「こんなのより早く操法を習いたい」という人も少なくありません。

 

しかし、これを完璧にマスターすれば、ほぼ全ての操体法のからだのさばき方は、体得することができます。

 

まずは「般若身経」をマスターすることからです。

 

どこか調子が悪くて、というのであれば、操体の施術を受けながら、セルフケアや、日常気をつけることなどは指導してもらえるはずです(私はやってますよ)。

 

なお、操体は「専門家に受ける」のは簡単です。

専門家は、そこを勉強しているので、ご本人が全く操体を知らなくても、軌道に乗せる術をしっているのです。

 

★たまに、ひどい?操体の指導者に当たってしまい「私ってよくわからないんで、操体を受ける資格がないんでしょうか」という方がいらっしゃいますが、そういう場合は、指導者が悪いのです。 指導者本人がわかっていないので、受ける方もよくわからない、ということになってしまう。

ご本人の責任ではないのに、ご本人が自分を責めるとか、操体って全くよくわかんない、というように思われてしまうのです。

 

それは操体実践者としては待った!をかけたい。

 

 

そしてそして、

私(畠山裕美)のところには「操体の本を読んでもさっぱりわからない」という方が、数多くいらっしゃいます。特に「ベーシック講習+操体の施術」を受ける方(これが当方の1番人気メニューです)は、殆どそうおっしゃいます。

 

大抵は「まず、本を買ってみるか」と、本を買います。でも、わからない。

 

わからない理由というか、操体の本(特に「操体法の実際(橋本敬三先生の著書ではない)」とか「万病を治せる妙療法」とか「ひとりで操体法(橋本先生の著書ではない)」)は、イラストがアバウトですし、タイミングやどうやって触れるのかとか、大事なことが抜けているのです。何故抜けているのかは果てしなく謎です。

 

もうひとつ。操体は「きもちのよさ」や「快」というキーワードも多用されます。

が、「万病を治せる妙療法」は、橋本敬三先生が「操体は快である」とおっしゃった、85歳より以前にかかれたもの、発売されたものです。

この頃の操体は「楽な方に動かして、瞬間急速脱力する」のがメインでした。

つまり「快」ではなく「楽」でスムースという選択をしていたのです。

 

それが、橋本敬三先生が引退後、85歳の時は三浦寛先生に、その後は90歳卒寿のお祝いの席で「楽と快は違う」「呼吸は自然呼吸でいい」とか、それまでの操体の常識をぶっ壊すことをおっしゃったのです。

 

三浦先生は、他の人よりも5年も前に「楽ではなく快」という言葉を師匠から受け取り「快」に特化した操体を体系づけました。それが「第2分析」です。

 

最初、それを知らない操体実践者達は、当時三浦先生と今先生が出版した

操体法治療室」(快にスポットライトを当てている)をガン無視したという話は効いています(私はこの本を読んで操体を志しました)。

 

 

30年位前は「きもちいい」という言葉は「女の子が使うとはしたない」とか、いわゆる性的なニュアンスがある(と言う人もいた)ため、あまりポジティブに使える言葉ではありませんでした。しかし「脳内革命」とか、「快」を肯定する風潮になってきました。

 

そうなってくると、それまで「橋本敬三は『快』なんて言ってねぇ」と、三浦先生をガン無視していた操体実践者達が、「さも最初からのように」「操体は快だよね」と、言い出したのです。

 

そして、やり方は「楽な方に動かして、瞬間急速脱力」のままなのに、言葉だけ「快」とか「きもちいい」という言葉を使うようになったのでした。

 

話を戻すと、先に紹介した農文協の本は「快」以前の「楽」の操体を紹介しています。

しかし、読者は「操体って快だろ」と「快」を求めているのです。

 

が、本には「楽」の時代の操体しか書いていない。

 

なので、わからないのです。

 

ちなみに、農文協の方に聞いたところ、入社時の社員研修で「操体法」をやるんだそうですが「よくわからない」と言っていました。

楽と快を混同しているから、わからないのです。

 

そして、もう一つ。

「楽な方にきもちよく」という言葉です。

これ、耳ぎこえはいい言葉です。しかしですよ。

 

楽な方がきもちいい、とは限らないのはお分かりでしょうか。

楽な方は、きもちよいのではなく「スムースでなんともない」のです。つまり、きもちよさはない。

 

たまに指導者でも「楽な方にきもちよく動いてバランスを整える」なんていう操体目線でいえば(操体でなければ別に言ってもいいですが)、まるっきりアホなことを書いている人もいるわけです。

 

下図は、快と楽と不快を図示したものですが「楽」と「快」を混同してしまっていると、操体の全体がつかめなくなります。

 

 

 

なので、操体をやってみたいな、自分でもできるかな?と思ったら、まずは一度操体の専門家に相談してみてください。

 

ポイントは

「楽」と「快」の違いがわかっていること

×「楽な方に気持ちよく動く」とか言わないこと

※コレを言ってる人は「楽と快」を混同しており、ちゃんと勉強していません。

 

これは、後程説明しますが、

×「きもちよさを探して動く」

×「どちらがきもちいいですか」と言わないこと(快を比較対照しようとする)

 

です。

 

 

私がこういうことを繰り返し書いているのは

「本を読んでもわからない」

操体を受けたけど、何がきもちいいんだかわからなかった」

という人がここ20年絶え間なくいらっしゃるからなんです。

 

あともう一つ。

操体も、環境に従って、からだにどんどんやさしくなっています。

30年前、40年前の操体の動画などを見ると「うわ。激しい」と思うものもあります。

21世紀にはいり、手技療法自体が、ソフト化、低刺激化しているのは事実です。

操体もその後「皮膚にアプローチする第3分析」や「呼吸を用いる第4分析」など、からだにやさしい進化を続けています。

 

 

はじめての操体法は、操体のプロに習うのが、近道ですよ、ということです。